国会議員こそ10万円受給を辞退せず、自ら経済を回せ | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

国会議員こそ10万円受給を辞退せず、自ら経済を回せ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策として行う現金支給は、紆余曲折の末、「10万円一律非課税での給付」に落ち着きました。

 

しかし、安倍晋三首相は自民党役員会で、この10万円の現金給付について、「全閣僚が受け取りの辞退を申し合わせた」と説明。自民党も、所属する全国会議員に関し、受け取りの申請を行わない方針を固めた(役員会で、対応が二階俊博幹事長に一任)と報じられました。

この判断は一見、「受け取れば世論から批判を受けるとの指摘が党内から出ていた」(日経の報道)ことを受け、国民感情に配慮した妥当なもののようにも感じられますが、筆者は必ずしもそうは思いません。

 

翻って、この10万円現金給付について、これを政策論として冷静にみれば、その目的は、
①人心の安定(低所得者層を中心に、全国民に対して)、
②当面の生活原資の一部補填(主に低所得者層に対して)、そして
③消費に回して経済を少しでも回す(主に中・高所得者層に対して)、
という3つに集約できるでしょう。


であるならば、政府・与党の「議員は受給を辞退すべし」との申し合わせは、この目的(とくに③)に明らかに逆行します。こうした辞退の風潮が拡散すると、地方議員や首長までもがこれに追随しなければならないといった、おかしなマイナス思考の連鎖を生じかねないことを懸念します。


10万円を丸々貯蓄すれば何の波及効果もありませんが、消費に回せばまず1割は消費税で国庫に戻ってくるうえ、残り9割の資金を何回転させられるかで、景気下支え効果が決まるので、国会議員はむしろ積極的に消費しなければならない立場なのです。

 

国民の代表である国会議員として、この危機に臨んで一律に給付された10万円をいかに有権者が感心するような、有効な使途に回せるか、これこそがポリシーメーカーの真骨頂ではないでしょうか。

 

ウイルス感染リスクを増大させるような使い方(例えば歌舞伎町の風俗店に行くなど)はいけませんが、国会議員各位にはぜひ、「3つの密」を避ける抑制的な行動が求められる中にあって、経済を回すための工夫をこらした、有効な10万円の使い方を実践していただき、SNSなどで拡散して頂ければと思います。

 

このように、国会議員がこの10万円を一般国民同様に受け取り、有効に使うことで経済を回す範を示してくれれば、国民は10万円の給付を受けた議員たちを非難することはありますまい。

 

むしろ、国民感情を逆撫でするような、微々たる歳費カットなどでお茶を濁し、「身を切る改革をしている」とアピールをするよりも、よほど筋が良いと受け取られるでしょう。


せっかく自分たちが苦労して決めた政策を、議員自ら否定するような申し合わせをし、自分たちの存在価値を損なうよりも、前向きな行動をとるほうがずっと良い対応と言えるのではないでしょうか。