楽観できなくなったかも知れない日本経済  ---- 海外要因がさらなる下方リスクとなるか | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

楽観できなくなったかも知れない日本経済  ---- 海外要因がさらなる下方リスクとなるか

桜花の4月となりビジネス街には真新しいスーツを纏ったフレッシャーの姿がみられるようになった。平成最後のひと月を含む平成31年度が始まると共に、5月からの新元号「令和」の決定とも相俟って、わが国にはいつもにも増して清新な気風が漲っていることは喜ばしい限りである。

 

こうしたなか、わが国の景況感をあらわす経済指標としてもっとも注目度が高いものの一つ、日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)の結果が公表された。

 

今回調査では大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は「+12」となり、前回調査(昨年12月=+19)から▲7ポイント悪化。世界的な景気減速への懸念を背景としたもので、DIの悪化は2四半期ぶり。悪化幅も2012年12月調査(▲9ポイント)以来6年3か月ぶりの大きさであった。先行きのDIは製造業が「+8」(今回比▲4ポイント)となり、現状比での悪化を見込む。

 

他方で、遅行指数である設備投資への影響は今回調査では未だ顕在化しておらず、大企業全産業の2019年度の設備投資計画は前年度比+6.2%増となった(非製造業を含む大企業全産業では前年度比+1.2%増)。

 

この間、2019年度大企業・製造業の想定為替レートは108.87円と、現状に比べ輸出環境からみて幾分厳しい相場展開を予測する結果となった。

 

実は日銀は、3月の金融政策決定会合で、景気は「緩やかに拡大している」との見方は維持していたものの、「輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられる」の文言を加え全体的な判断は下方修正していた。当然ながら政府も同月の月例経済報告で、「景気は緩やかに回復している」との基調判断は日銀同様に維持しつつ、「このところ輸出や生産の一部に弱さも見られる」との表現を加えて、やはり全体の判断を2016年3月以来3年ぶりに下方修正していた経緯がある。

 

こうしたダウンサイトリスクへの言及と整合的に、3月の日銀金融政策決定会合の主な意見では、「海外経済動向や消費税率引き上げの影響次第では、景気後退への動きが強まっていく可能性があり、懸念される」との指摘もみられたところである。

 

以上から、新年度に入って、日本の景気は主として海外景気に影響される形での下振れリスクがやや高まってきたことは確かであろう。

 

政府・日銀としては、中国経済がさほどの落ち込みをみせることなく持ち直すことを期待し、2019年度後半に向けて米国を含む外需が好調を回復するまで、設備投資を中心とした内需に景気を牽引し、消費増税先送り論が勢いを増すことなしに税率改定が予定通り実施できることが最良のシナリオと考えていることは疑いないところであろう。

 

しかしながら、年度後半には減税効果が薄れる米国経済のスローダウンを予測する向きも出ており、こちらも心配なしとはいかない。米国の景気に陰りが出ることで利下げ観測が拡がり円高圧力が現実のものとなれば、国内株式市場の混乱要因となりかねない。

 

無論、今回の「短観」では設備投資の増加傾向の継続が好材料となったことから、悲観論が一挙に拡がることにはならず、表面上は「今回の短観は、まずまずの結果」というところで一応留まった形だが、世界経済の先行きの不透明感が設備投資の下方修正に繋がる可能性も否定できない。

 

というわけで当面は、海外経済の減速に足を引っ張られて内需が失速するリスクにも注意を払わざるを得ない状況であり、必ずしも楽観してはいられまい。4月下旬に日銀が公表予定の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」において、先行きのリスク分析がどのようなものになるか注目していくことになろう。