今なぜ議員定数「増」なのか | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

今なぜ議員定数「増」なのか

ここにきて急に湧いて出た感が拭えない、参議院における議員定数是正(増員)をめぐる議論については、間接民主制の根幹にかかわることだけに、熟議もなしに単に与党・野党といった利害に立脚した党利党略・個利個略にもとづいて改変されることには賛同できません。

 

参議院地方区における選挙区の合区によりあぶれた議員を救済するために比例区を増やして対応する云々などというのは、まったくのご都合主義であって、国民主権を冒涜するに等しいものでしょう。
 

しかしながら、一方向に議員定数をただ減らすことだけが良いとも思われません。議員定数が減れば、少数意見が国政に反映されにくくなることは自明です。

 

そうなると、人口動態を反映して一票の格差を極力小さくすることは勿論ですが、状況によっては定数を増やして、一票の格差の是正を図るほうが合理的なプランも出てくる可能性も否定しません。
 

ただ、国民の多くが嫌悪感を抱くのは、立法府のコストが定数増によりそのまま自動的に増大することなのだと思います。
 

立法コストを一定に保ったうえで、そのなかで議員歳費を含む経費をやり繰りする中で、定数を増やして国民の代表を増員するなら理解が得られる可能性もあるでしょう。
 

その場合に壁となるのが国会法第35条です。
同条では、「議員は一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く)より少なくない歳費を受ける」と規定されており、すなわち「国会議員の歳費は、各府省事務次官より安い水準ではダメ」という規定があるのです。
 

国会議員が非常勤であるにもかかわらず、常勤の国家公務員一般職の最高位よりも高い水準の給与を受けることができる仕組みの背景には、それ相応の理由があるものとは思いますが、定数増のかわりにこの条文を改正して、議員歳費の水準を下げるということになれば(そんなことを国会議員自身が決めるとは到底思われませんが)、この原則が崩れることとなり、それはそれで国家公務員の給与体系全体に多大な影響が出ることは必至です。
 

したがって、与党側は当然、この原則を維持しつつ、定数だけを増員したいのでしょうが、そうなれば明らかに立法府のコストは増嵩し、モリカケばかりで国民のための法案の審議が十分になされない立法府の現状に鑑みると、国民の理解を得ることは難しいでしょう。
 

というわけで、いずれにせよ国民の理解が得られる形で、熟議をし、立法府全体のコスト管理(例えば歳費に関する原則は維持しつつも文書交通通信滞在費や立法事務費の削減などで立法府予算は現状以下にする等)や費用対効果も勘案しながら、定数是正は検討されるべきではないでしょうか。

 

自民お手盛り選挙改革に“進次郎砲”炸裂「国民をなめるな」|日刊ゲンダイDIGITAL