一律の定員増では解決できない「獣医師問題」へのアプローチ | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

一律の定員増では解決できない「獣医師問題」へのアプローチ

学校法人加計学園の獣医学部新設が計画されている愛媛県で、日本獣医師会の政治団体「日本獣医師連盟」傘下の「愛媛県獣医師連盟」(県連)への会費支払いを拒否する獣医師が相次いでいることが報じられています。

 

この会費支払い拒否をしている多くは公務員獣医師だそうで、恒常的な人手不足など現場の待遇改善が実現されない状況で、日本獣医師連盟が学部新設阻止に動いたことへの強い不満が背景にあるとメディアは解説しているのですが、本当にそうでしょうか。

 

これは、どうもよくわからないロジックです。

 

「公務員獣医師の待遇改善を図ること=獣医学部新設による獣医師増を図ること」とは限らないと思われます。仮に大学学部新設や定員増によって新規に育成される獣医師数が増えたとしても、彼らが志願して「公務員」にならなければ、何ら問題は解決しないのですから。

 

そればかりか、無用に「非公務員」の獣医師相互間の競争激化を生みかねず、自縄自縛の事態も起こりかねません。

 

一般的に言えば、供給が増えることは、既存の獣医師にとっては不利(競争激化や待遇悪化など)になりやすい面が多いでしょう。

 

巷間いわれている現下の「事実」を順不同に整理してみると

・全国的にみて、獣医師数それ自体は不足しているわけではない

・ただし、獣医師の所在にはかなりバラツキがあり、都市圏には多く、非都市圏には少ない

・獣医師の多くは、自らの裁量で稼ぐことができる開業医への志向が強く、給与所得条件が相対的に劣る公務員にはなりたがらない

・以上から、獣医師資格を要する公務員の確保が困難な自治体がみられる

ということでしょう。

 

この整理が正しいとすれば、この問題の解決策は、一律単純なものではすまないことは容易に想像ができるでしょう。

 

上記を踏まえれば、やはり獣医師問題は、公務員と非公務員とに分けて議論されるべきで、両者間に利害対立があるために、一律に方向性を求めてもこのような纏まらない結果になってしまうのでしょう。

 

仮にこの問題を政治運動によって動かそうとするのであれば(それが奏功するかどうかは別として)、いっそのこと、公務員の獣医師さんたちは別の組織を立ち上げたほうが、より運動がしやすいのではないかと思います。

 

http://www.sankei.com/politics/news/170821/plt1708210004-n1.html