いわゆる「安倍昭恵問題」について | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

いわゆる「安倍昭恵問題」について

右翼系の教育機関に対する100万円の寄付の事実の有無や国有地払い下げ問題など様々な論点が出てきています。これらの問題から派生した、「総理夫人の活動に対する国家公務員の関与」について、ここにきていろいろと取り沙汰されており、マスコミや野党サイドからは、総理夫人の活動に国家公務員身分を持つスタッフが帯同して、私的な講演や選挙運動を行うことが問題視されています。

 

私が思うにこれは、政務3役(大臣・副大臣・大臣政務官)に就任している政治家が「公務・政務・私的活動」の仕分けをきちんと行っていることと同様の対応がなされていないことが問題なのだと思われます。
 

無論、総理夫人は政務3役とは異なり、第一義的には私人の身分です。しかしながら、時と場合によっては、①公務(員)に近いもの、②政務に近いものが当然でてくるわけで、一年中③私人の立場、というわけにはいかないのです。
 

まず①の場合(例えば、外交儀礼上の外国首脳夫人の接遇、あるいは総理夫妻として出席する公式行事等)には、その公共性の高い活動を補佐するために、公務員による事前のレクチャーや帯同は必須となりますし、公用車の使用など、税金由来の金銭の支出も認められて然るべきでしょう。こうした活動を「私人の活動だから」として、公的にサポートしないことは、逆に国益に反するものであり、大きなリスクを孕むことは明白です。
 

次に②の場合(例えば、自民党総裁夫人として与党公認推薦候補者等の選挙応援を行う場合等)には、これも然るべきスタッフ(安倍事務所スタッフや自民党スタッフ等)が帯同することが求められます。ただし、これには税金由来のお金は使えないので、事務所の政治活動費や自民党の経費をもって支弁することが相当でしょう。
 

他方、③の場合には、原則として個人行動のため補佐役は付さないことは当然です。どうしても補佐役や移動のための乗用車が必要ならば、個人のコストをもって必要ならば雇うということになります。
 

総理夫人においても、その活動に際しては、以上のような仕分けをすればよいだけのことで、そのような作業はさして難しいものではない筈なのですが、これがうやむやのままに運用されていたことが今、問題として噴出しているのでしょう。
 

実際、政務3役に就いている政治家は、この点に気をつかっている人が多いというのが私の印象です。たとえ大臣であっても、一人の議員として活動する場合には大臣専用車を使うことはなく、自分の事務所の車に乗り替えたり、事務秘書官(役人)を役所に帰して自分の秘書と交代させたり、といったことをきめ細かく行うケースが普通であるように感じます。
 

無論、安倍昭恵さんが参議院選の期間中に公務員の補佐役を伴って、該当演説を行ったからといって、帯同した公務員がただちに法令違反に問われる(公務員の選挙運動)ことは(まさかその人物自身が演説を行ったり選挙ビラを配布したりしない限りは)ないでしょう。ただ、長期政権であるからといって、こうしたことをいい加減にしていると、足元をすくわれることになりかねません。

 

国内問題はもとより、朝鮮半島情勢などが緊迫化の度を増し、ロシアの首都でも大規模なテロが勃発するなど、対外政策にも高度な政治判断が要求される事項が山積みであろう今日、総理夫人の業務仕訳問題などで、官民の貴重なリソースを費やしてもよいものなのか、この辺でよく考えたほうが良いかもしれません。