東京都を真の先進自治体に | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

東京都を真の先進自治体に


筆者を含め、このところ東京都民は少なくとも2回続けてリーダー選出に失敗してきたという苦い経験を持っています。

 

猪瀬直樹氏は徳洲会からのヤミ献金問題により最終的にはその疑惑を認めて自らその職を辞すこととなりました。続いて登場した「クリーンなはず」の舛添要一氏もこれまた政治と金の問題によって任期途中でその地位を追われることとなりました。かわって知事に選ばれたのが、現在の小池百合子氏です。


有権者たる東京都民にとって、今年の知事選挙はまさに「三度目の正直」であり、元来必要のない都知事選挙を繰り返し行うことを余儀なくされ、その都度20億円もの本来不要な選挙経費を自ら納付した税金から費消する愚行を繰り返してきたことを肝に銘じておいたほうがよいでしょう。


英国のブライスは 「地方自治は民主主義の学校だ 」といいました。これは「身近な問題を取り扱う地方自治に参加することによって、民主主義を学ぶことができ、政治に参加する姿勢も育つ」という意味です。

 

とすれば、東京都民というのは、他の道府県民に比べて、「民主主義の学校」における成績は(少なくともこれまでは)低位にとどまってきたということにならざるを得ないでしょう。

 

自分たちの住む東京都に関する知見をほとんど持たず、地域の課題について真剣に考えてみることもないままに、リーダー選びとなると、そのときの「人気」で日和見的な投票行動をとった結果が上述のような累次の失敗ということになっています。

 

筆者はこれまで地方自治に関する調査研究活動を通じ、全国の様々な「先進的な経営を行っている自治体」およびそのリーダー(首長)に関する知見を得てきたところですが、彼らに共通するのは、政策の企画立案を行う際の着想が徹底した生活者起点であるとともに、自治体経営の可視化・検証可能化(情報公開)が徹底されているということです。


情報化社会の今日、地方自治(体)に関する情報はインターネットを通じ世界中で共有可能となっており、もはやその流れに抗うことは不可能でしょう。

 

こうした情勢を背景に、さまざまな機関が自治体の経営先進性や個別項目(例えば情報公開度)に関するランキングを行って公開するなどの動きも定着しているのですが、こうしたなかにあって、わが国の首都である東京都のそれがどのようなものであったかを知ると、暗澹たる気持ちに陥らないわけにはいかないでしょう。


筆者の知人で地方政治に通暁したある人物は、「東京都の行政は、まさに『灯台下暗し』で、マスコミや住民が注目しないのをいいことに首長や議員たちが好き勝手にお手盛りのような予算執行を行っている、前時代的などこかの寒村と同レベルだ」と評していました。

 

むろんそうした状況を招いたのは、都民自身であることに違いないのですが、それに加えて東京都特有のマスコミ事情もあると筆者はみています。

 

すなわち東京以外の道府県には、地域のニュースを細かく報ずる地方紙があり、住民はローカル情報を日々得ることができるのに対し、東京の場合は全国紙の一部に小さな地方版があるのみで、紙幅は極めて限られており、とても木目細かな情報を届けられる体制にはなっていないという現実があります。

 

しかし首都だけにひとたびスキャンダルが起これば、それ自体は「全国ニュース」として日本中に配信されます。そのようにして一時は大騒ぎしても、「ことが終わればまた沙汰止み」という状況が繰り返されてきたといえましょう。

 

ただ、今回は些か様相を異にしているようで、小池知事誕生とともに東京都の諸課題(例えば東京五輪利権問題や築地市場移転問題など)にも光が当てられ、報道機関が東京都政の「各論」についても積極的に扱おうとする姿勢が少なくとも現時点までは継続しているように思われます。

 

こうした動きを本質的な意味での都政改革に活用しない手はありません。従来の悪しき慣行や閉鎖性を打破して、東京都が真の先進自治体へと生まれ変わるには、この機会を逃してはならないように思われるのです。