プレミアム商品券は地方創生に役立つか | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

プレミアム商品券は地方創生に役立つか

 自治体や商工会議所などが発行するプレミアム付き商品券が話題である。これは、消費者が地元商店でしか使えない商品券を一定額購入すると、これにプレミアムが付加されるもので、その「利回り」は1割程度から3割を超えるものまであるという。例えば、ある自治体では、1万円分購入すると、500円券が22枚(11,000円分)の商品を地元商店に限って購入することができる。

 こうした商品券導入の背景には、「昨年4月の消費増税の影響を緩和し、消費の呼び水になれば」といった、地元自治体や商業者の意向があるといわれ、その効果については、「過去2回の発行はリーマン・ショック後の2009年度と東日本大震災後の2011年度であり、いずれも厳しい経済環境下での個人消費下支えに一定の効果が認められた」とか「商品券には釣銭が出ないので現金と合わせて使う人も多く、消費増に繋がった」等の前向きなコメントもきかれる。

 地方自治体サイドからも「商品券の使用は地元限定ゆえ地域内消費を促す効果が期待でき、安倍政権が掲げる地方創生にも資する」との自画自賛の声もきかれる。

 だが、つまるところ、トータルでの税収は増えたのか、消費の反動減はなかったのか、についてはこれまで殆ど検証されていないのだから何をかいわんやである。

 この商品券で高額品を買うという消費者も確かに皆無ではなかろうが、他方で日用品の購入に回しプレミアム分だけ節約する人も少なくなかろう。単なる節約目的なら個人消費は増えないばかりか、このような商品券を制作・頒布するコスト分が無駄である。また、低所得者ほどプレミアムの恩恵は大きいとの見方もあるが、この程度の規模では所得再分配とも言い難く、結局、生活保護などのセーフティネットをしっかり張るほうが心理的安心感にもつながり、本来の制度趣旨に適うことになろう。

 国がプレミアム商品券を発行する自治体等に補助金を出す場合には、「納税者全体の負担により商品券購入者と地元商店だけにメリットが行く」という図式の妥当性を予めよく検証すべきであろう。

 この種の政策を検討する場合、富裕層が多く、自治体財政に余裕がある地域や、全国的な知名度が高く住民以外も購入できるようなところでは波及効果が期待できるので、有効と考えて差支えなかろう。

 しかしながら、国主導で全国一律に発行すると一時的に消費は増えても、翌年には当然、反動減が一斉に起こる。これではトータルでの税収は増えず、単なるバラマキに終わる可能性が高い。とすれば、いったいこの政策は何のために行われるのだろうか。

 各地商業者の努力を否定する積りは毛頭ないが、地域の自助努力をサポートしつつ消費を喚起してイノベーションを促すのであれば、価格が高く品揃えが悪く努力をしない地方商店街でしか使えない金券を発行し、安くて良質の財やサービスを追求する、真っ当な感覚をもった消費者の行動をわざわざ歪める必要がどこにあるのだろう。自由主義経済の原理に抗う非効率な商業者を仮に一時的に保護しても、資源配分の歪みが拡大し、やがてはより大きなインパクトで破たんを来たすことにもなりかねない。

 と考えてみると、結局のところ、この「プレミアム商品券」というものは、社会主義もどきの筋の悪いバラマキ型政策に終わる可能性が高いといったら言い過ぎであろうか。
 
※大樹マンスリーレポート6月号掲載原稿
 文中の意見にわたる箇所は筆者の個人的見解である