日本全国「塾」流行り | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

日本全国「塾」流行り

石原慎太郎・東京都知事もいよいよ政治塾を開設するらしい。そうなると既存の「塾」よりもインパクトは強く、応募者が多数押し寄せる可能性もあるのではないか。


仮に「石原塾」ができるならば、老舗の松下政経塾は別格として、名古屋の河村市長、大阪の橋下市長などが主宰する政治塾に加えて、いささか「乱立」という様相を呈してくる。政治を志す人は、どの塾にいくのか大いに悩むことになるのかもしれない。


ではいったいなぜ、こうした「塾」が流行るのか。その理由は大きく3つくらいありそうだ。1つは資金の問題だろう。政党助成を受ける既成政党以外が、政治的なパワーをつけようとすれば、第一に資金が必要であることは否定しえない事実である。政治資金パーティーを開催するのも手だが、それでは政治革新を訴求するに、どうも似つかわしくない。ならば塾を設けて受講生を集め、薄く広く資金を集めるほうがスマートだ。


2つ目は人材面。政治的プレゼンスを確保するには、資金のみならず、選挙に備えいつでも即戦力となれる人材を獲得しておきたい。いざ選挙となったときに、候補者が揃わないのでは最初から勝負にならないが、さりとて質の低い「案山子候補」ばかりでは意味がない。そこで事前に人材を集め、選別したうえで囲い込むことができるのは、政治団体にとって非常に有効なシステムというわけである。


3つ目は広報戦略。政治活動は存外地味なもので、なかなかニュースのネタにはなりにくい。街頭演説やミニ集会などはその重要な要素だが、テレビで取り上げられることはまずない。その点、塾を通じて、折々に様々なイベント(著名講師を招聘しての特別講演会や強化合宿など)を演出すれば、その都度、マスコミは取材に来る。こうしておけば、地方都市が中心の活動であっても、その存在感を全国に示すことができるわけである。


というわけで、日本全国「塾」流行りの傾向は、今後も続いていくのだろう。選良となるべき人たちが、税金で飯を食い、センセイと呼ばれるようになる前に、必要な研鑽を積み、素養を身に着けておくことは、決して悪いことではない。しかしながら、「塾」にいかないと政治家になれないという風潮が余りに強くなるのは、いささか奇異な感じがしないでもない。子どもの「塾」費用に四苦八苦させられた経験をもつ親の一人としては、つい「塾なんぞに世話にならなくても自力でハードルをクリアできる人のほうがいいかも」などと考えてしまうのだが・・・。


http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012051801072