日本再生へのアプローチ | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

日本再生へのアプローチ

日本青年会議所(JC)の会員誌「We believe」1月号が届きました。私はこの冊子の27ページに寄稿を依頼されており、1月号から4月号までを担当することになっています。初回の1月号では、「日本再生へのアプローチ」と題して次のような原稿を書きました。JCメンバー以外の方にもぜひご一読頂ければと思います。


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日本再生へのアプローチ

公益社団法人日本青年会議所 アドバイザー
大樹総研 代表取締役所長 池田健三郎


東日本大震災はじめ多くの苦難に満ちた2011年が過ぎ去り、2012年がスタートした。そもそも従来から多くの課題を抱える日本国であったが、昨春以降、なすべき課題のリストには「震災からの復興」という大きなテーマが追加され、これらすべて合わせて、まさに表題のとおり「日本再生」に向け、今年こそ真剣に取り組まければならないことは、いまや多くの国民の共通認識であるといって差し支えなかろう。


では、日本を再生するとは具体的にどのようなことだろうか。確かに、震災により破壊されたインフラの復旧も各論としては重要であることは間違いない。しかしながらそれはあくまで手段であって、目的ではない。従来から課題である諸々の構造問題にメスを入れることもまた然りである。


詰まるところ、日本再生とは、この国の持続可能性を確立すること、すなわち「子どもや孫・曾孫の代まで、後顧の憂いなくゆたかな生活がおくれる基礎的条件が担保されること」と考える。実は7年ほど前から私は、今後はロハス(LOHAS= lifestyle of health and sustainability)すなわち「健全性および持続可能性のライフスタイル」の考え方が重要になってくると主張してきたのだが、今まさに国民生活のあらゆる面において持続可能性が問われており、これは日本再生と同義なのである。


こうした中、例えば財政面だけをみても、国は既に1000兆円の借金残高を抱えながら、毎年度、税収が40兆円しかないのに90兆円もの歳出予算を組み、その都度40兆円の借金を繰り返す。仮に消費税率を10%に引き上げても、10数兆円程度の増収にしかならず「焼け石に水」である。しかも人口減少に伴い労働力は縮小するため、経済成長によってGDP増加を図ろうとすれば非現実的なまでの生産性向上が必要だ。こうした不健全な現実を目の当たりにすると、「持続可能性」や「ロハス」の言葉も虚しく響くばかりである。


このほかにも、環境や社会保障をはじめ教育、外交、企業の事業承継、エネルギー問題など多くの分野で(やや性質を異にするが、昨今では国民の心の拠り所である皇統に至るまで)持続可能性が取り沙汰されている。これらはいずれも「今さえよければよい」、「そのうち何とかなるだろう」ではもはや済まされない段階にある。具体性のない「何か」や「誰か」を当てにするのではなく、まずはすべての当事者が「自立」に向けた最大限の自力救済を模索し、先憂後楽の精神をもって目先の労苦に立ち向かう姿勢が求められているのである。


戦後復興を成し遂げた日本人には本来、自立のための底力と、自立を前提としつつもいざというときには互いが助け合い問題解決を図る、共助の精神が備わっているはずで(震災では実際にこれが発揮された)、これを支柱に据えようというのが青年会議所の2010年代の運動指針であるときく。


だが、現在の日本には、いつの間にか社会主義的な甘えの構造が拡がり、自立が前提であることを主張しにくい雰囲気が蔓延していることには強烈な違和感を禁じえない。税負担が発生する所得の下限が世界一高位に設定されているために三分の一の者しか所得税を払わず、他国では立派な課税対象者である人々に対し世界標準で中産階級並みの生活保護費が支給され、なおかつ消費税率引き上げにも多くの人々が反対する一方で、選挙をやれば平均して半数以上の有権者は権利行使をしない、という現実に目を背け続けることはもはや許されない。


これらをしっかりと踏まえて、真に持続可能な社会づくりを具体的に論じ、まちづくりを推進して成果を挙げるには相当な覚悟とパワーを要することであろう。となれば、2012年、全国各地域における青年会議所およびそのメンバーの役割と社会的責任は極めて重く、その道程は多難にならざるを得ない。

しかしながらここはひとつ、皆で気合いを揃え、勇気を持って、日本再生に向け、先ず身近なところから一つ一つ取り組みを始めていこうではないか。私共も、そのために必要なお手伝いは何でもさせて頂くつもりである。一緒にがんばって行こう。