タイガーマスク現象 | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

タイガーマスク現象

年明けから、全国の児童養護施設などの玄関先に、「伊達直人=漫画の主人公であるタイガーマスクの本名」を名乗る人物から、施設の子ども達あてにランドセルなどのプレゼントが届けられているというニュースが報じられています。


不思議なことにこの「キャンペーン」は徐々に全国に広がりをみせており、全国至る所で別々の「伊達直人」からプレゼントが贈られるケースが報告されるようになり、中には「伊達直人」ではなく「桃太郎」などを名乗る送り主も出現しているようです。


このニュースは、何かと世知辛い世情にあって、このような篤志家も少なからずいるのだということが改めて多くの人々に認識される美談として扱われています。確かにこれだけのことを単なる「伊達」や酔狂ではできないですね。


そうした評価は当然であり、篤志家のみなさんには私も心から経緯を表したいと思うのですが、見方を変えると、いまの日本でこうした現象が多発的に起こるのは、経済的に余裕のある人から税などを取立て、その中から社会的弱者に手を差し伸べる費用に充当するという、「所得の再配分機能」が有効に機能していないと感じる人が増えていることの証左なのかも知れません。確かにこうしたインパクトのある形で寄付を行えば、ニュースでも報じられるので、義務の履行である納税よりも、良いことをしたという実感や満足度は高いのでしょう。


あるいは、国家のセーフティネット機能の成果とは無関係に、何らかの理由で、一部の篤志家が、自らの資金を自らが救済したい人々への現物寄付に振り向けることが単に流行しているという可能性もあります。


政策論的にいえば、政府はこの際、こうした状況によく目を凝らし、国家が介在する形での所得の再配分機能に歪みや問題はないかを、よく検討すべきことのサインと受け止めたほうがよいかも知れません。


タイガーマスクを名乗り、わざわざ自費で寄付を行う篤志家に対し、こうした直接寄付を行うのではなく、高額の納税を行うことを通じて社会参画し、国家に適正な歳出実行をと念願している人は、このような風潮に対しどのような感情を抱いているのか、直接うかがってみたい気もします。


いずれにしても多額の寄附行為をしようにもできない私のような立場では、こうした人々の気持ちを正確に推し量るのはなかなか難しいものですね。