中国大使人事と淫行会長 | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

中国大使人事と淫行会長

政府は、次の駐中国大使に伊藤忠商事の丹羽宇一郎相談役を起用する方向で調整中との報。実現すれば1972年の日中国交正常化以来、初の民間出身大使となるそうで、これは、菅総理が鳩山前政権から検討事項として引き継いだ「政治主導」人事の一環といわれています。


丹羽氏といえば、大手総合商社・伊藤忠商事の社長、会長を経たほか、今年3月まで地方分権改革の旗振り役である「地方分権改革推進委員会」の委員長を務め、猪瀬直樹氏らとともに、答申を骨抜きにしようと躍起になる事務局官僚たちと、バトルを展開しながら、国の出先機関の大胆な地方移管(人員削減)を答申に盛り込むなど高い成果を挙げたのは記憶に新しいところです。


丹羽氏は、ビジネスを通じて中国との結びつきが深いことで知られ、北京市や江蘇省の顧問会議メンバーを務めるなど、中国通として知られているそうですから、(当たり前のことですが)個別企業の利害得失を離れ、名誉職的な就任ではなく、活発に行動する実務家型大使として活躍していただけるのであれば、こうした主要国への民間大使起用の動きはひとまず前向きに受け止めてよいと思います。

もちろん、日中間には、東シナ海ガス田開発やわが国固有の領土である尖閣諸島に中国が領有権を主張している問題など、幾つもの重要課題が横たわっており、いずれも容易に解決できるものではありません。報道によれば、こうした課題山積の状況なので、外務省内には「民間出身で乗り切れるか」との慎重論も出ているそうですが、「外務省プロパーでなければ課題が解決できない」などあり得ない話で、これは外務官僚の驕りと重要ポストを民間人に奪われることへの僻みから出た言葉として受け流したほうが良いかもしれません。


むしろ、今回のケースに限らず、在外公館長(大使や総領事)の任用は、これまでのような外務官僚偏重という日本独自の手法を改め、上場企業経営者や学者・研究者、法曹関係者、マスコミ関係者、国会議員OB、NGO関係者等を含む多様な人材を充てるよう、従来の慣行を改めていくべきでしょう。


話は変わりますが、伊藤忠商事のように、その経営者を政府の枢要で活躍しうる人材として輩出できる企業もある一方で、上場企業にもかかわらず、コンプライアンスの基本も知らない、およそ企業の体をなしていないような好対照の上場会社に関するニュースもあります。


引越し業のアートコーポレーションといえは、派手なテレビCMなどでご存知の向きも少なくないでしょうが、あろうことか、その代表取締役会長が女子高生にわいせつ行為をしたとして、東京都青少年健全育成条例違反(淫行)の疑いで書類送検されたそうです。これを受けて同社はこの会長について、本人の申し出により「代表取締役会長及び取締役の辞任」を発表したのですが、何と6月中旬の取締役会で新たに「相談役」に就任すると報じられています。このような人物に対し、会社は、この期に及んで何を「相談」するというのでしょうか。このニュースを報じたニュース番組のときに、ちょうどこの会社のCMが自粛もされずに垂れ流されているのをみて、失笑を禁じ得ませんでした。