公会計の導入で国・地方自治体の財政を「見える化」しよう | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

公会計の導入で国・地方自治体の財政を「見える化」しよう

企業の財務内容を正確に認識するためには、複式簿記(貸借対照表と損益計算書)が必要不可欠であることは今更いうまでもありません。とくに多くの人から多額の資金を集めて経営しなければならない上場企業の場合には、必ず会計をきちんと整えておかなければならないのは当然のことです。


では、法律などにより強制的に税金を徴収し、これを公共の目的のために使う国や地方自治体の場合はどうでしょう。これらの公共セクターの会計は企業会計と同様にきっちり整えられているかというと、残念ながらそうはなっていないのが実情です。ほとんどのケースでは、子どもの「お小遣い帳」や時代劇に出てくる「大福帳」のように、収入と支出だけ、つまり「いくら入ってきて、いくら出て行ったのか」だけしか記録しないのです。


このような状態では、国や地方自治体などの財務状態を正確に把握することは到底できませんので、住民が気づかないうちに大きな借金を抱えてしまって身動きが取れなくなり、最終的には公共サービスの切り下げや、住民負担の大きな増加につながるリスクもあるのです。


こうしたリスクを回避するためには、国や地方自体も企業と同様に、複式簿記による「公会計」をきっちりと導入し、財務状態の「見える化」をおこなう必要があるというわけです。


日本の景気が好調で、企業セクターが利益を稼ぎ出すことにより、国や自治体の財源である税収がしっかりと確保できる状況ならばともかく、現状のように景気が低迷を続け、企業収益が芳しくない状況では、税収だけで国や自治体を運営することはできませんから、税収不足を穴埋めするために国債や地方債を発行して、金融市場から資金を調達(つまりは借金)してこなくてはなりません。


しかし、民間人や民間企業が借金をする場合には、収入証明や財産の状況などについて詳細な資料を提出し、いかに返済能力があるかをあらかじめ貸し手である金融機関などに説明しなければ、絶対にお金を借り入れることはできません。もちろん、企業の場合には複式簿記による財務諸表を提出することが要求されます。


他方で、国や地方自治体はというと、正確な複式簿記に基づく財務諸表などロクに作成もせず、堂々と金融市場からお金を借りることができているのは考えてみれば不思議な話ですが、ここにきて、夕張市の財政破綻や国の債務残高の増崇などを背景に、国や自治体に対しても、複式簿記による「公会計」をきちんと導入し、財務状況を正確に認識するようにすべきとの議論が徐々に高まりつつあります。


こうした状況を受けて私は、今こそ「基準モデル」と呼ばれる正確な公会計を国や自治体に幅広く導入し、公共セクターの財務状況の「見える化」を積極的に推進する必要があると考えています。


昨夜は私と同じ考えをお持ちの、大手監査法人の幹部の方々と非常に有益な意見交換をさせていただきましたが、今後、様々な立場の人たちとさらに連携を強め、公会計の普及に力を注ぎたいと考えているところです。


皆さんのお住まいの自治体が、既に基準モデルによる正確な公会計を導入するなどして、財務状況を「見える化」しているかどうか、一度調べてみられてはいかがでしょうか?