公職と公人の「過去」 | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

公職と公人の「過去」

組閣に続いて、各省庁の副大臣や政務官人事も発表され、鳩山内閣における各省庁の政治家によるガバナンス(統治)の姿が徐々に明らかになってきました。


それとともに国会の役職も、正副議長に続く、各委員会の委員長、各会派の筆頭理事など論戦の舞台となる国会運営の枠組みも固まりつつあるようです。


こうした中で話題となったのは、衆議院の外務委員長ポスト。結論としては民主党会派に所属する新党大地の鈴木宗男氏の就任が決定したのですが、この人選に先立ち、野党の自民党は受託収賄罪などに問われている鈴木氏の公判が続いていることから「刑事事件の被告人が委員長になった例はない」と反対。これに対し、民主党側は「推定無罪の原則がある」と反論し、調整が続いていましたが、最後は「数の力」が勝ちました。


因みに、疑惑発覚当時に与党であった鈴木氏のことを国会で「あなたは疑惑の総合商社」などと強烈に批判していた社民党の辻元清美・衆議院議員も、今や連立与党の一員として鈴木氏と同じ与党側に立ち、それだけでなく、彼女は何と今回の人事で国土交通副大臣に就任しています。


鈴木宗男氏がまだ判決が確定していない「推定無罪」の身ならば、辻元氏は秘書給与を詐取し流用していた罪を自ら認め懲役2年執行猶予5年の判決が確定し、今年2月にようやく執行猶予が終わったばかりという立場。刑事事件で有罪判決が確定した人物が行政府の役職に就くのは、佐藤孝行総務庁長官(1997年)以来12年振りだそうですが、鈴木氏のことをとやかく言うのならば、辻元氏の副大臣就任も決して筋がよいとはいえない人事ではないでしょうか。


私は個人的には、秘書給与の詐取で国会議員が有罪となるということは、タクシードライバーが飲酒運転で重大事故を引き起こしたのと同じくらい酷い行為であって、いくら制度上は許されることとはいえ再びハンドルを握る(執行猶予中にも選挙に出て当選し、議員活動をする)などもっての外だと思っていましたから、辻元氏が強大な公権力を行使しうる立場にある副大臣に就任したことには、正直いってかなり失望しています。


それにつけても、今回の選挙で初当選を果たした新人女性議員の過去の職業などについて、面白おかしく暴き立てるメディアが多いのには閉口します。その当時に公人でもなかった人物が、どのような職について仕事をしていようが(それが合法的で社会通念上許されるものならば)、余計なお世話というものです。ましてや俳優業の方が、芝居の中でどのような役をやっていようが、そんなことどうでもよいではないでしょうか。本人は記者のぶら下がり会見で「お騒がせして申し訳ございません」などと謝罪していましたが、何を謝罪する必要があるのか、まったく釈然としませんでした。


ともかく、国民からすれば、与党は選挙で国民に約束したマニフェストをきちんと実現するよう、まじめに仕事さえしてくればよいのです。その本質をワザとボカすような、こんにちの報道のあり方は残念ですね。