北朝鮮の核実験 | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

北朝鮮の核実験

今日の朝刊各紙は表題の通り、昨日の北朝鮮による地下核実験実施の記事がメインでした。


この種の外交・安全保障関連ニュースをみていていつも気になることですが、事件発生後のごく早い段階での日本政府高官(たいていは内閣官房長官)のコメントが、どうも奥歯に物が挟まったような物言いになるのです。


例えば今回の場合は、「北朝鮮が地下核実験を行ったことが報じられているが、これがもし事実であるとすれば誠に遺憾・・・」というように。


言うまでもなくこれは、海外における重大事案発生に際しての日本政府の情報収集能力の限界を露呈しているのですが、例えば米国やロシアのように、(スパイ衛星や情報収集担当者を通じて)直接の情報収集を行っている国々は、「北朝鮮が地下核実験を行ったことを確認した」と言い切り型で発表できるので、どうしても最初の段階での日本政府の対応が際立ってしまう嫌いがあります。


ただし今回は、気象庁が「人為的な地震波を観測した」とオリジナルな情報をもとにした会見を開くことが出来たので、その点がやや救いだともいえなくはないですが、やはりそれだけでは情報収集に関する不安を払拭しきるのは難しいといえましょう。


こうした問題を「日本はスパイ衛星も持たず、情報収集もノウハウがないから仕方がない」で片付けてしまうのは簡単ですが、少なくとも、日米同盟を機軸に安全保障を考えるという日本のオーソドクスなアプローチに従えば、米国からいつ、どのような形で正確な情報が、同盟国である日本にもたらされたのかについては、日本国民はもっと強い関心を寄せたようがよいように思います。少なくとも日本独自で収集した直接情報でなくてもかまわないから、せめて米国政府からは、報道発表より僅かでも早く情報を取って欲しいというのが、日本国民の願いではないでしょうか。


もちろん、情報はタダではないので、日本は普段から相応に米国に対してコスト負担を強いられているわけですが、肝心なこうした場面での情報不足を目の当たりにしてしまうと、本当にコストに見合った情報を得られているのかについては、疑問なしとしませんね。


今やインターネットを通じて、一般の人々がかなり早く、正確な情報を世界中から拾うことが出来るようになっているだけに、本当に信頼できる、可能な限りオリジナルな情報源をいかに確保するかというのは、政府に課せられた大きな課題であることは間違いないでしょう。


それにしても、これで6カ国協議(日本、米国、韓国、中国、ロシア、北朝鮮)を舞台にした、対北朝鮮の多国間交渉のチャンネルはこれで使えなくなったとみるべきでしょうから、今後日本として、いかに「ならず者国家」北朝鮮と対峙していくか、新たな打開策を探らなければならず、苦しい展開が予想されます。


また、さすがに今度ばかりは中国・ロシアも北朝鮮を庇い切れないので、国連安保理では明確に北朝鮮「非難決議」が粛々と採択される流れでしょうが、そうなったからといって、事態が何か好転するという確証はどこにもないのが実状であり、まさに手詰まり状態に陥ることが懸念されます。


こうなると、北朝鮮が望む米国とのバイラテラル交渉(二国間協議)にすべてを委ねる以外にないのでしょうか。オバマ政権がそうすんなりとバイ交渉のテーブルに着くとも思われませんが・・・・。