入園式と「親子泣き別れ」 | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

入園式と「親子泣き別れ」

きょうは3歳の娘の幼稚園の入園式でした。初夏を思わせるような陽気のなかを、親子3人で幼稚園の門をくぐり、わが子の成長に感慨を覚えて帰ってきました。


その一方で、家族の絆について考えさせられる悲しいニュースもありました。13年前からの不法滞在で強制退去を命じられたフィリピン人一家の在留問題で、中学生の長女カルデロン・ノリコさんの両親が国外退去(帰国)のためマニラに向けて成田空港を出発したと報じられています。ニュースでは、両親との涙の別れのシーンがたびたび映し出され、娘を持つ私もノリコさんがとてもかわいそうで、本当に胸が痛みます。


多くの報道では、この件について「政府(法務大臣)には人間の心がないのか」とか「杓子定規に法律を適用しすぎているのでは」という批判が大勢のように見受けられます。しかし私は、どうもこの点には引っかかりを感じてしまいます。


誤解のないように申し上げておくと、ノリコさん自身は何ら非難されることはなく、本当に気の毒な境遇であり、何とか彼女のために力を尽くしたいと考える方が大勢いらっしゃることは当然のことと思っていますし、何とか将来的に家族が望む共同生活が実現すればよいと考えているのです。


しかし、それほど大切な娘を抱えつつも、当の両親は13年間も何をしていたのかということがどうしても気になってしまいます。密入国を企てる外国人から見て、日本がいかに外国人に対する実質的な門戸を狭めている国であるかは少なくとも13年以上前から周知の事実です。偽造パスポートで日本に入国した外国人は、まず擁護されることはありません。一旦それを許せば、周囲を海に囲まれた島国である日本の入国管理行政は、根本から揺らいでしまうからです。


そうした厳しい環境をもった国である日本に敢えて入国したこの両親は、本当に娘が可愛いのであれば、ずっと息を潜めて暮らしていて3年前に密入国が発覚するまで、なぜ可愛いわが娘のために必要なアクションをとらなかったのでしょうか。例えば、子どもがもっと小さいうちに母国フィリピンや他国で暮らすことを考えれば、少なくとも言語の問題でノリコさんに降りかかるであろうハンディも軽減できた筈です。


ですから私は、ノリコさんに対する支援の手を差し伸べる方々には躊躇なく同調できるのですが、不法入国者である両親を支援している方々には、どうしても釈然としないものを感じてしまうのです。


いうまでもなく、今回のことで日本が不法滞在外国人に対するペナルティを軽減するような制度改正を行うことには納得ができませんし、無論そうはならないでしょう。


そうした意味を含めて今回の事件の報道振りには、日本のマスコミの個性というか、その本質が、かなりストレートに現れるのではないかと感じています。今後の動向を見守りたいと思います。