山形知事選 | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

山形知事選

昨日投開票が行われた山形知事選挙は、元県教育委員の吉村美栄子氏が、再選を目指す現職の斎藤弘氏を僅か1万票差で破り、初当選。


本来ならば2期目の再選を目指す現職というのは最強のポジションなので、今回は再選間違いなしと思っていただけに意外な結果であった。


現職の斎藤知事は私と同じ日本銀行OBで、4年前の初戦では、個別の政策項目を具体的に提示し、それぞれ期限や財源を明示した模範的ともいえるローカル・マニフェストを掲げて当選。就任後は自らのマニフェストを着実に実行することに注力するとともに、厳しい財政事情のなかで行財政改革を断行するために自ら範を示すべく知事退職金を廃止したほか、県政史上初の県債残高減少を実現するなど、画期的な改革を行ってきた。


それだけに、個人的には今回の結果を山形県の外からみると、いささか不思議な感じがしないでもない。


ただ、こうした行財政改革が県民に「痛み」を与えたのも事実で、1期4年の行財政改革の実績をよそに、思い切った補助金削減などの影響を受けた農業、福祉、経済団体などが反発したことで、支持が広がらなかった面もあるのかもしれない。殆どの県内市町村長や自民党議員が現職支持ではあったものの、一部の国会議員が造反するなど、斎藤知事の「改革」に対するアレルギーが保守分裂を招いたことが新人の逆転を許す契機になったのかもしれない。


ちなみに投票率は65.51%(前回59.32%)だった。


山形に限らず、昨年来の全国の首長選挙をみていると、選挙時にローカル・マニフェストで行財政改革のメニューを掲げ、歳出カットなど大胆な施策を断行している首長が、痛みを嫌気した市民によって再選を拒まれるケースが目立ってきている気がする。


それはそれで民主主義の厳然たる結果として受け止めるべきは当然なのだが、国から地方への税源移譲も期待できないなかで、歳出削減(行革)以外に自治体の持続可能性を担保する選択肢は見当たらないのが実情。それにもかかわらず、当事者である市民が景気低迷を受けて、自治体財政の健全性よりも当面の痛みを回避するほうを優先した後には、どのようなツケが回ってくるのかを考えたくない人が増えたということなのだろうか。


今年の自治体選挙は、国政選挙との絡みもあるにせよ、こうした厳しい自治体の現状を踏まえて、有権者が「改革vs痛み回避」でどのような判断をするのかに着目していきたい。