三大バカ査定とその引き揚げ | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

三大バカ査定とその引き揚げ

 平成の世になって、役所の無駄遣いが話題にならない日は皆無といって良いくらいですが、昭和の無駄遣いの象徴という意味で、ときの大蔵省主計官をして「三大バカ査定」と言わせしめた案件はすでに半ば忘れ去られようとしています。言うまでもなくそれは、「戦艦大和」、「伊勢湾干拓」そして「青函トンネル」のこと。


 その三大バカ査定の一つ「戦艦大和」を巡って、今ちょっとした話題が持ち上がっています。


 ご存知の通り戦艦大和は、昭和16(1941)年に広島県・呉の海軍工廠で完成した世界最大の戦艦(基準排水量65,000t)として、戦艦武蔵と並び称せられるもっとも有名な艦船です。昭和20(1945)年4月7日、沖縄特攻の途中に、米軍機の攻撃で沈没し、鹿児島・坊ノ岬沖の西約200km、水深約350mの東シナ海に眠っています。


 その戦艦大和の船体を「引き揚げよう」という構想が、建造地・広島県呉市の経済界によって打ち出されました。冗談と思いきや、これは至って真面目な話のようで、今日その準備委員会が開かれたとニュースが報じています。


 同委員会では、「大和によるまちおこし=地域活性化」を掲げ、大和の主砲(重量約3,000t)や船体前部など、同艦の特徴的な部位をできるだけ多く(もちろん分割して)引き揚げたいという壮大な構想をもっているようです。しかしながら、その費用は総額でどんなに少なく見積っても数10億円規模にはなるということで、今春にも実行委員会を立ち上げて、全国に募金を呼びかける意向である由。


 どうです、なかなかロマンのある構想で、昨今何かと縮み志向の政策が多い地域政策のなかではとてもユニークなものですね。私が住んでいる神奈川県「大和」市なども、少し協働を検討してみてみるのも悪くないかもしれません。

 

 しかしながら、こうしたアイディアは大体、構想段階まではよいのですが、突き詰めれば現実はやはり厳しいといわざるを得ないでしょう。もちろん、全国から多額の募金が集まって、それだけでこのアイディアが実現できてしまうのならば何も言うことはありませんが、まさかこの時代に多額の税金を投じてこの構想を実現させようとしても、多くの人々の賛同を得るのは至難の業でしょう。


 とはいえ折角の「妙案」なのですから、今後地域の人々を中心に「費用対効果」をよく吟味しながら、この構想の実現に向け、より多くの人の賛同・協力を得て着実に募金を集めていくことが大切ではないでしょうか。そして、身の丈にあった事業をする、例えば部品のほんの一部でもよいから資金の範囲内で引き揚げて、その成果を最大限に活用するような手法を、みんなで知恵を絞って捻り出すことができれば、そのこと自体が地域活性化に繋がるのではないかと思います。この種の事業・構想は、結果だけでなく、プロセスを大切にしないとうまくいきません。


 ただし、飽くまでこれは「身の丈にあった」事業を実施することが前提です。さもないとこれは、今度は洒落にもならない「平成の三大バカ査定」になりかねませんから。