イスラエル-パレスチナ情勢への懸念 | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

イスラエル-パレスチナ情勢への懸念

世界経済が横並びで危機に突入するなかで、経済をダメにする最大の要因である戦争、とくにイスラエル-パレスチナ間における戦闘がいっこうに収束する気配がなく、民間人犠牲者も日を追うごとに増えるのをみるにつけ、新年から何ともやるせない思いにさせられている。


国連安全保障理事会は1月8日に、「パレスチナ自治区ガザでの即時停戦と、イスラエル軍の完全撤退を求める決議」を採択したが、現地ではこれが無視される形でなおも戦闘が続いている。こうなると、旧来の国連安保理を中心とした秩序の維持はますます困難になり、安保理そのものの存在意義が問われることになるのは避けられそうにない。


なかでも国際社会の不信感を増大させたのは、こうした情勢にあってもなお、米国はこの決議に加わることを放棄し、議決を棄権したという事実である。これまで国際社会の顰蹙を買ってきたブッシュ政権の外交政策の延長線上と捉えれば、今回の米国の棄権じたいは「整合的である」とのみかたも当然できなくはないのだが、政権交代を目前にしてなお、イスラエルに一方的な肩入れを余儀なくされる米国の姿をみると、もはや国際社会におけるリーダーシップの発揮とか、大国の矜持といったようなものはどこかに捨て去り、だたひたすらに自らの惰性の赴くまま、そのポジションを守ることに汲々としていると感じざるをえない。


米国の次期オバマ政権が、この件にどのようなスタンスで臨み、イスラエル-パレスチナ問題にどのようにコミットするにせよ、ブッシュ政権の最後にこのようなマイナス作用を増幅させる行動をとられたのでは、米国の新体制が外交の場における国際社会からの信認を回復するのは容易なことではあるまい。


現状の先進諸国に求められていることは、何の利益も生まない不毛な戦闘行為を容認するよりもむしろ、国際社会が一致団結して経済の建て直しを図ることは自明だが、その前にそれが心置きなくできるような環境作りが必要なことはいうまでもない。米国の同盟国としての日本が、こうした現状を踏まえて、どのように米国にモノを言うかも問われて来よう。


もっとも、この2日間の国会審議は雇用情勢と給付金問題に終始したようで、国際情勢まで考えている余裕はないようであるが・・・。