年賀状と生活防衛 | 経済評論家・政策アナリスト 池田健三郎オフィシャルブログ「健々囂々」(けんけんごうごう)Powered by Ameba

年賀状と生活防衛

さすがにもうお正月気分は完全に抜ける頃でしょうが、それでも私のところには毎日、パラパラと年賀状が届いています。そろそろまとめて片付けた方がよさそうです。


ところで、郵便事業がここ数年で郵政省→郵政公社→日本郵便(JP)と経営形態を変えたことによって、消費者が知らない間に不利益を押し付けられていることは案外知られていません。


その典型的なのが「切手の使用制限」です。実は昨年から、郵便物をまとめて出すときに「現金代わりに切手やはがきで郵便料金を支払うこと」が出来なくなってしまいました。


もともと、切手というのは、郵便料金を先に払った証拠として、実際に権利を行使する(郵便物を差し出す)ときに貼るために生まれた道具で、一種の公的な「有価証券」なのですから、利用者がいつでも使いたいときにその額面分の権利行使ができなければおかしいのです。


ところが日本郵便(JP)では、お役所(郵政省)時代に郵便局の収入を確保するためといって、やたらと切手を出しまくったせいで、最近、切手やはがきが売れず、現金収入が入ってこなくなって困っていたのです。一方で、昔ブームだったときに大量に購入した人や、ノルマがきつくて自腹で購入させられた郵政職員の人たちが、自分の切手を換金するために金券ショップに持ち込むのですが、供給過剰という理由で額面の6-8割程度でしか買い取ってもらえず、最近では買入れ自体を停止する金券ショップも出ているようです。


そもそも国家の信用を背景に発行された切手が、額面100円に対して店頭で80円とか85円で売られること自体がおかしいのです。海外ではこんな例はきいたことがありません。


これを何とかするには、郵政自体が、切手をやたらに発行しないよう自制し、過去に売った分がある程度、郵便に利用されるのを待ってから、市場に新しいものを供給する必要があることは、ちょっと考えれば誰でも気がつくことです。


ところが実際に発動された政策は、これとはまったく反対のひどいものでした。昨年、郵政では新規発行を自制するどころか、「昔、発行した切手・はがきを使いにくくしてやれ」というひどいルール変更を一方的に行ってしまいました。これで一番迷惑したのは、日頃から金券ショップなどで少しでも安い切手・はがきを購入して、経費を節約していた人たちではないでしょうか。


でも、これに対する消費者としての対抗策がまったくないわけではありません。


私がお奨めするのは、来年の年賀状以降については、「お年玉クジつき年賀はがきを使わず、私製はがきに切手を貼って差し出すようにすること」です。


そもそも「年賀状はクジつきでなければいけない」などということはないのですが、何となく「郵便局が売っているあれを使わないと気が引ける」といった理由だけで漫然と購入している人が多いようです。実際のところ、郵便局にとって年賀状はドル箱で、たとえば企業や大口の個人宅など1件で1000枚くらいはがきを受け取るところも少なくありませんが、それだけで差出人が新たにはがきを購入すれば、郵政の新規収入は50,000円になります。もちろん、郵便局では、あらかじめ12月下旬までに差し出されたものをまとめて束ねて1月1日に配達することでよいのですから、一般の郵便物にかける手間ヒマよりもずっと軽い負担ですむのです。


こうしたことから郵政にとっては、お年玉クジつき年賀はがきを使う習慣は「何としても続いてもらわないと困る」というわけです。年末になると、駅の構内やスーパーの入り口前などで郵政職員が寒さに震えながら懸命に年賀はがきを売ろう(=ノルマ消化)としている背景は、ここにあるのです。


しかし、末端の郵政職員の苦労をよそに、いかに100%政府出資の官営株式会社とはいえ、「過去に売った切手・はがきはなるべく使わせないようにしよう」という日本郵便(JP)の経営者が考えた安易な方策をそのまま受け入れるのは、消費者としては少々腹立たしいものです。


というわけで、今年の年末こそは、自分の家にある昔の切手をかき集めるのもよいですし、あるいは金券ショップで激安価格で売らている「過去の切手」をしっかり使って、私製はがきの年賀状を出すことを考えてみてはどうでしょうか。これは生活防衛上もなかなか有効な手段だと思います。


※ ちなみに私が共同代表を務めている日本郵便文化振興機構というNPOでも、過去に発行された記念切手をまとめて額面でお頒けしていますので、よろしかったらご利用下さい。