※画像は赤石温泉旧白樺荘外観
 
※この随筆は2006年5月19日に執筆したものに加筆修正しました。
 
※これは憲さんがmixiを立ち上げたときに初めてアップした第一作で、記念すべき憲さん随筆最古のものです。
 
※これは、私の所属する組合機関紙に載せている私の温泉紹介コラムです。機関紙には字数制限があるので全文載せられませんが、ここではその全文を掲載しちゃいます!
 
「安い料金の温泉ほど良い温泉」こんな温泉についての格言があります。今回はそんな温泉を紹介しましょう。
 
(2006年)5月の連休、バイクに乗って静岡にツーリングに出かけました。
 
静岡は大きく3つの観光エリアに分かれます。
 
海や山など観光資源にも恵まれ、温泉も多い伊豆地域。
 
遠州灘から浜名湖にかけての海が広がる温暖な海岸地域。
 
そして南アルプスの南部を擁する山岳地域です。今回はその山岳地域に出かけました。
 
そこは山深く、さらに交通の便がよくないため、今なおあまり観光地化されていません。実際行ってみると、谷から谷へと他の県では当然あるはずの峠越えの林道も、山が険しいせいか整備されていないので、山を越えて隣村に行くのにも、結局太平洋の海岸沿いまで出て遠回りせざるを得ません。さらに山梨側に抜ける林道は5月現在でも雪が残り閉鎖されています。そんな山に閉ざされた不便さが観光地化を妨げたのか、このあたりには鄙びたいい雰囲気の温泉地が人知れず存在します。
 
その中でも静岡県の最奥部、県道60号線がどん詰まる南アルプス赤石岳への登山基地の手前、畑薙湖の湖畔にその出湯はひっそりと存在します。
 
それが、赤石温泉白樺荘です。
 
日本三大崩れ 大谷崩れ(おおやくずれ)
 
前日は日本三大崩れの一つ、安部川の源頭、大谷嶺の大崩壊地大谷崩れを直登し、大谷嶺を登頂しました。
 
大谷崩は標高2千メートルの稜線から一気に1千メートルにわたる大崩壊地で、1707年の宝永地震でおきたものだと言われています。
 
参考
【大谷崩】
 
大谷嶺 三大崩れの大谷崩れは圧巻でした!
 
ここは連休というのに人もおらず、ひっそりと静まり返り、眼前に見上げる1千メートルのがれ場にただただ畏怖の念を抱くだけでした。
 
ここを訪れた作家の幸田文は、その自然の荒々しさに感動し、小説「崩れ」を著しています。
 
参考
憲さん随筆
熱海市伊豆山の土石流は明らかな人災である。幸田文『崩れ』から学ぶ
 
大谷崩れを制覇した後、その日は梅ヶ島温泉に入湯、標高1500メートルのキャンプ場で、テント泊しました。
 
参考
【梅ヶ島温泉】
 
翌朝、目が覚めると気温は摂氏2度。凍死寸前の貧乏旅行を嘆きながら、朝風呂温泉に入るべく、一路、赤石温泉へ!
 
斜面一面、茶畑が続く九十九折の道を抜け、白樺荘に着いたのが午前8時半。まだ誰もいません。施設では開ける準備か従業員のおばさんたちが慌しく作業をしています。
 
一人の方にいつ開くのか尋ねると10時開店のこと。
 
ガーーーン!
 
あと1時間半。結局畑薙湖まで脚を伸ばし、時間をつぶすことにしました。畑薙ダムや登山基地、遭難碑などを見て時間をつぶします。
 
参考
【畑薙第一ダム】
 
9時半に白樺荘に戻るとぽつぽつと人が集まっています。みんな玄関に並んで施設が開くのを待っています。私も並びます。
 
「アンちゃん、どこから来たズラ?」「あのポンポンで来たズラか?」ポンポンとはオートバイを指すようです。みんな「ズラズラ」言っています。静岡市内から来たようです。何かいい感じ。話が弾みます。
 
市営の無料つるつる温泉!
 
10時ちょうどに施設が開きました。そのときばかりはみんな殺気立ちわれ先へと入ります。施設の個室休憩室を確保するためです。私は一人だからゆっくりと浴室へ向かいます。この白樺荘、静岡市が運営している施設で温泉は無料で提供しています。(※2023年現在は有料)宿泊はできませんが、無料で一日中個室で休み、何回も温泉に入れるらしいです。なんとも大盤振る舞い。静岡県民はさすが気前がいい!
 
温泉は古来、大地に自然に湧出しているものでした。それは土地を掘削する必要もなければ、お湯を地中深くから揚重する必要もありません。もちろん沸かす必要だってないのです。だから湯を溜める浴槽さえあれば後はなんにも必要ないから必然お金もかかりません。
 
逆にムリクリ温泉を名乗る施設は初期投資や設備維持に膨大な金がかかります。だから入湯料も高くなるのです。しかし、そんな温泉に限りまがい温泉が多く、逆に安い温泉は昔ながらのしっかりとしたいい湯が多いものなのです。
 
浴室に入ると二つに仕切られた湯船。一方は源泉が注がれているらしく一杯になっているますが片方はまだ半分。湯量はそんなに多くありません。湯を一杯にためるため、10時からの開業なのかと合点しました。
 
もちろん源泉が直接注がれている湯船に入ります。窓が一杯に開放されているせいか、浴室に硫黄臭は立ち込めていませんが、湯に顔を近づけるとしっかりとした硫黄臭です。嬉しくなります。泉質は昨日入った梅ヶ島温泉に似ていますが、口に含んだ塩味が赤石温泉は薄いように感じました。
 
しかし、特筆すべきはその湯のヌルヌル感です。単純硫黄泉だがアルカリ度が高くヌルヌルするようです。
 
最高の花見風呂
 
全開の窓から外を見ます。中庭にある八重桜が満開に咲き誇っています。上質な温泉に昼間から浸かっての花見風呂。極楽とはまさにこの事だと、隣で浸かるこれまた静岡からきたじい様と顔をほころばせます。結局、小一時間湯に浸かっていました。
 
風呂を出ると、食堂で山芋の蔓になるむかごを肴にビールをいただく。向かいにすわったおじさんと山談義に花が咲く。だから一人旅はやめられません。
 
参考
秋の味覚「むかご」のレシピ
(※憲さんはこの時初めてむかごを食し、それから病み付きになった!) 
 
ビールの酔いをさますと、愛車のバイクにまたがり、大井川に沿ってゆっくりはしる大井川鉄道と競争しながら山をおり、その日の晩には東京の人となっていました。
 
皆さんも、静岡の山に出かけてみませんか?遠いようで近い穴場です。素敵な温泉と飾らない人たちが暖かくあなたを迎えてくれますよ。
 
赤石温泉 白樺荘
場所:静岡県静岡市田代1005番地
料金:無料(10時~16時)
泉質:単純硫黄温泉 (低張性アルカリ性温泉)pH9.3 泉温:38.2度
効能:神経痛・関節痛・糖尿病・皮膚病など
 
※現在の白樺荘は平成21年(2009年)にリニューアルオープンしてそうです。(入湯料大人510円)
 
参考
南アルプス赤石温泉「白樺荘」
 
昔日の白樺荘はこちらのブログが詳しい
赤石温泉 白樺荘
 
どーよっ!
 
どーなのよっ?