読者の皆様こんにちは!

そして、オペラスタジオに申し込んでくださったアマチュア/セミプロの方々、

ワークショップに申し込んでくださったプロ歌手の方に感謝申し上げます。


オペラスタジオには5名の方、

ワークショップには2名の方々が参加し、

一旦ここで申し込みを締め切らせていただきます。


しかし、プロの無料ワークショップは

8月にまた行ないますので、その際、またご参加申し込みくだされば嬉しいです!


ご質問がある方はメールをどうぞ!

kenbaryton@gmail.com


さて今記事は、今回ワークショップに参加した

2名のクライアント様の方のための手引として、

また、これから劇場付きの研修所を将来的に受験したい諸君に対し、書かせていただきます。

参考になれば幸いです。



1◎洗練

洗練は極めて重要です。

プロとトッププロを分ける要素です。

しかし、洗練は、耳で聴けば一発でわかる単純なことだが、ことばで説明するのは難しい。

たんにきれいに歌っている、というわけでもないが、

豊かで強い響きがあるすっきりした形式のなかで清潔にまとまっている。

昭和生まれの人ならば、CDから聴こえてくるような音、と表現すれば通じるかもしれないが、

若い諸君にはどう伝えたらいいか?

わたしは、ツルッとした声と雰囲気、現代的なスタイリッシュな声と見かけ、というふうに若い諸君にはつたえますが、ピンときますか?

いや、きっと、そうでもないでしょう!


洗練は、劇場で仕事をしていれば自然に身につきます。20代でさまざまな役を通して経験を積み、周りの歌手やオーケストラに綺麗に合う声を探り、指揮者やコレペティの先生に厳しく指導され続けるなら、30代には、形式感と清潔感のあるプロ的な声の出し方になっている。

でもわたしが思うに、、、それでは遅い!

20歳で、せめて頭でだけでもいいのでわかってほしい!でないと間に合わない!

2名のプロ歌手の諸君、およびこれから劇場つき研修所に入りたい諸君は、

どれほどあなたがたのオペラ美学に反していようとも、洗練されたスタイル、をあなたの売りになるくらいに受け入れないといけません。

ひとにガミガミ言われてだんだん綺麗に歌えるようになるのではなく、先に綺麗に歌うことに慣れなさい。これはまた同時に【唯一の、エージェントと契約する方法でもあります】。

洗練に興味がないならレストランでナポリ民謡を歌いなさい。わたしの意見ではなくマエストロRenato Bursonの意見でした。



◎幅広いレパートリー

ときに歌手は4つのオペラアリアだけを武器に世界を回ります。悪いことではないです。

しかし、劇場研修所が求めるレパートリーは、日々、時代を追うごとに拡大しています。

この流れに合わせるしかありません。

若い歌手の皆さんは、それぞれのジャンルに2曲ずつの勝ち曲をつくるところから始めないといけません。アリアは基本的にはロマン派でしょうから、積極的に近代の歌曲や、バロックの宗教曲などを探すことになります。

声の基本的な出し方をどのあたりの時代様式に近くするかも問題で、

かつての先生方は、声は、ベルカントもののアリアや歌曲でつくる、とおっしゃっていたが、

わたしは、声の中心はドニゼッティ後期、ヴェルディ前期でつくることを推奨し、速いコロラトゥーラで声を鍛え、そこを中心にしてどこのジャンルにも移動できる柔軟性を持てるように勧めます。ラヴェルにもバッハにもパッといける交差点に声をいつも戻すことです。



◎現代の演出のなかに溶け込む映画的表現

わたしは音楽院のオペラクラスでは、誇張した、舞台俳優のような演技と、またそういう歌い口をおそわったのですが、実際のフランスやドイツの仕事の現場では、映画的な、誇張されてない、リアルな表現を演出から求められ、戸惑いました。

これはたとえば、二期会のマスターを終えて、公演にデビューした生徒もおなじようなことを言ってましたが、つまり、いまの演出家は、偉大なシェークスピア俳優のように、お話をなぞる俳優ではなく、やり尽くされたものを壊すというか脱構築する俳優を求めてます。

難しいが、要するに、Netflixを、映画を、オペラという伝統芸能に持ち込む勇気をもちなさい。

あと、そもそも、ハズい、というか、やりきれてないことをやるのはやめなさい。

わたしのミラノ時代の生徒は、22.00からわたしの部屋でみんなで行なった即興ダンスのレッスンを覚えていますね。

リスクを犯して、身体ぜんたいで、しっかり表現しなさい。

それは、エージェントや演出家や劇場監督の目にとまる、必要条件ではないにせよ、間違いなく十分条件です。

同じくらい歌えてるライバルに競り勝って研修所入りしたいなら明日からやりなさい。

特訓の仕方はわたしが教えます。



◎モーツァルトに精通している

そもそも20代に差し掛かる中でダ・ポンテ三部作のうち、ひとつも暗譜してる役がないなら、

そもそもあなたには劇場に就職するのに何が必要かがわかってません。

ダ・ポンテ三部作は1ページ覚えてはトイレットペーパーとして使うくらい、頭に叩き込みなさい。

モーツァルトの役にはつらつとしたエネルギーをステージでぶつけなさい。

またレチで、スピード感と、ウィットに弾ける感性を見せつけなさい。

むろん、わたしがモーツァルトの役で、うまく歌えた!と思い始めたのは30代からです。

20代はそもそも歌い通すだけで、いや、膨大なレチを覚えるだけでせいっぱいでした。

コジに関しては勉強がついに間に合わず、それですくなくとも2つのスーパービッグチャンスを

20代で失いました。

真の成功をできなかったひとにはそれだけの理由があり、わたしが見本です!

断じて最高ではなく、たんに、『官僚的に』手順を踏めば、わたしだって一流劇場で、とりあえずデビューくらいまでならばできた!

みなさんは、それを怠らないように。




5◎シンプルな発声

シンプルな発声、といっても注意してほしいのはナチュラルな発声、との微妙な差です。

いまの若く偉大な歌手たちはロジカルに勉強したうえで、シンプルにつなげて歌っている。

たとえば、高音にはパッと簡単に行けることが大事だけど、そうなるには、本質的なことをメカニックに理解してないといけないです。

だから、若い諸君には断言します。

メカニカルに学び、スポーティに歌いなさい。

ワークショップでは徹底的に発声理論のおさらいをしますが、実際の曲になったら、カリスマ性全開で、スター登場!という感じに歌えるまで特訓します。



備考

さて今回のワークショップにはカリキュラムにはないが、

これからの歌手たちはスポーツとジムナスティックは義務です。

筋トレは喉に悪いという全時代の歌手の言うことに耳を貸さず、

まずはスクワットと腹筋から始めてください。

とりあえず有酸素は毎日です。

しかしながら、わたしは腕立てはクライアントには勧めないなど、細かいところで諸注意はあります。わたしはダンベルは歌う前はやりません。


またスポーツをやる目的は歌唱の向上ではなく、スポーツにそこまでの効果はありません。

発声を筋トレに依存する人は、たぶん本質的なことを掴んでないです。

どちらかというと、スポーツをすると、雰囲気が変わる、歌手としての見え方が変わる、現代的になる、、、、というほうが正しい。



では!次回の記事をお楽しみに!