もちろん実際のオペラの本番では鼻呼吸か口呼吸かを気にする必要はありません。

鼻からのほうが横隔膜が深く下がるとか言う人もいますが、わたしは歌うときのブレスがどちらが良いかには興味がありません。


今記事はオペラ歌手のための、歌うスタミナのための訓練です。

わたしは、とにかく走れ、と生徒に言いますが、その根拠になる記事と言えます。


走る理由ですが、

オペラ歌手に関するだけなら

ダイエットや健康促進という理由は5個目か6個目の理由で、走るのは歌うときに常に健全なコントロールを保つスタミナのためです。


まず初期段階の訓練として、

ジョギングで、1.5㌔を鼻呼吸で走ってみてください。

フラフラしたら口呼吸に切り替えながら、

まず1.5㌔を鼻呼吸で走れるまで訓練します。


つぎに、

1.5㌔を鼻で、次の1.5㌔は口呼吸を使ってもいいルールで合計3キロを走るトレーニングに切り替えましょう。


ここまでのカリキュラムを余裕で走れてしまった人は3キロ全体を鼻呼吸だけで挑戦してください。


3キロ以上は必要ないと思います。

むしろ最終的には3キロのタイムをすこしずつ伸ばしてください。


ともかく高いハートビートを保ち続けると、

よほど鼻の通りがいい人でも、吸いきれず吐ききれない状態に陥り、二酸化炭素濃度がどんどん上がり、肺がちくちくしたりしてきます。


これは、まさに継続して歌ってるとき、しだいにブレスが浅くなり、アップアップしてくる感覚になり、しだいに声帯も言うことを効かなくなる状態に近いです。

あるいは緊張し、パニックになり、全然歌えなくなりそうになる状態。


高いハートビートで鼻呼吸で走れるということは、この、歌うときの、息が上がった状態への耐性ができることに繋がります。


たとえばアリアで切れ目なくえんえんと継続的に歌うようなスタイルの曲でも(DonizettiやVerdiに多いスタイル)声帯に常によいブレスを与えられます。また、すこしの間隔の間奏で、

声帯に酸素を完全に与える力もつきます。


舞台で緊張してブレスが浅くなっても、息があがらず、声帯がざらつくことがありません。

というのも酸欠状態に慣れ、赤血球が酸欠状態でより活性化されるよう訓練されるからです。


あとしばしば飛行機で到着した2時間後には歌わなければならない生徒諸君は、

声帯がザラザラして息が上がりきった状態でも、65%以上のコンディションで歌える訓練が必要だと思います。


ただそのためには、

鼻呼吸でただ過ごしたり、歩くだけでは不充分で、ある程度の強度と高心拍数のなかでの鼻呼吸が必要です(じっさいの本番のなかでの歌の呼吸を対策するには)。



さて、1.5㌔を鼻呼吸で走れてからは、

音階練習に応用します。

ひとつのフレーズの音階練習を鼻呼吸だけでやってみます。

そうすると息が吐ききれず二酸化炭素濃度が高い状態が持続しますが、

おそらくジョギングであるていど鍛えられてるとぜんぜん気になりません。


また歌いだしのフレッシュさとか、

また、喉が温まる速さが早い、と感じたならば、

すでに特訓のメリットが現れています。


じっさいのアリアや役を歌うときにまで応用する必要はまったくないです。

  

またわれわれオペラ歌手は高い密閉状態で歌うことを強いられますから、二酸化炭素にかなり耐性がないとフラフラします。


また更に、このトレーニングを継続するならさらに素晴らしい効果があり、赤血球がより一層の

酸素を運ぶため、声帯にはメリットどころではないです。

本番を終えた翌日は声帯がザラザラして重いですが、これは回復がまだ完遂してないことを表しますが、この回復を確実に早めます。


ドイツにいたとき同僚がオフのときに登山してるのをよく観察したが、高地トレーニングはかなり良いことを多くのオペラ歌手が本能的に知っています。

しかし、わたしなんかは山に行くにも装備がなにもないし、ふだんからいちいち山に行くのも現実的ではないですから、擬似的に同効果を作り出すようにします。

ボクサーの辰吉丈一郎がマスクをつけてトレーニングをしていたが、

あなたのふだんのジムトレーニングにとりいれるなら、歌にかなり良い影響です。


プールの潜水でも同じようなメリットがある気がしますが、わたしはじつはプールに行かないので実感としてはわかりません(しかしオペラ歌手で潜水やスキューバをするひとは多い)。


オペラで一本とおすときスタミナがもたないひとや、アリアを歌ってると後ろの方で持たないひとはぜひやってみてください。


何度も念を押しますが歌うときのブレスは鼻からが良いという記事ではありません。

ある意味、ふだんの運動が大事という、根も葉もない記事でした。