★★★☆☆
中には、初めましての作家さんもいるけれど、
複数の著者を取りまとめた作品には、思い掛けずの出逢いもあるから、ふと手を伸ばしてたくなる。
今回は、そんな想いも散りばめられた、ミステリー作品六篇が収録。
いづれも個性豊かな才能に溢れ、プロットにもその個性が随所に垣間見られる。
忖度なしに言えば、
ちょっと好みではないかも・・
なんて作品もあるけれど、それは個々の価値観の違いに依るものであり、
決して作品のせいではない。
あくまで個人的な好みの問題で言えば、
近藤史恵さんの、『降霊会』は、
意外性抜群。
まさに、タイトルそのものの、
『どんでん返し』
がラストに待ち受ける。
しかも、少々ブラックなやり方で...。
学園祭を舞台に、
青春モノ!?
の気配を漂わせつつ、「犯人」...と目される人物を窮地に追い詰めてゆく。
99.9%追い詰められた主人公。
読み手も、「そうだったのか!」と、そこまでの意外性に驚きつつ、
真逆、最後の最後で、さらなるどんでん返しが待ち受けているとは...。
THE どんでん返し に相応しい幕切れに感嘆。
そして、ラスト。
若竹七海さん『忘れじの信州味噌ピッツァ事件』。
タイトルからして、何のこっちゃ!?だけれど、
侮るなかれ!
この、『良い所を詰め合わせた題名』こそが、ミステリーの肝になっているのである。
恐れ入る。
とにかく、コミカルなタイトル通り、ストーリーもコミカルさながらではあるものの、
プロットがしっかりしているから、「謎」がとっ散らかることもなく、
クスリと笑みを溢しながら読み進めていくことが出来る。
ある日通りをフラフラと歩く男。
薬でもやっているのか?と訝しる中で突然倒れ込む。
病院に運ばれた男に下された診断は、
【記憶喪失】
そして、駆け付けた大柄の女性...が二人!?
身元がようやく・・と思っていたら、この男...とんでもない過去を持っていた。
謎はますます混迷を極め...そして、新たな展開を見せる。
コミカルながらミステリーとしての王道は外さない辺りは、流石の一言。
まだこんな作家さんがいらしたのかと、嬉しい気持ちに。
他作品も粒ぞろいの煌めきが垣間見える。
好みの作品に出逢えることを願って。