★★★★☆
幼稚園を舞台にした、
幼稚園教諭とそこに集う愛憎劇を、中山流にウィットを利かして展開する、サスペンスミステリー。
中山さんらしく、
始まりから、不穏な空気をそこはかとなく漂わせる。
自分の信念は何があろうと曲げず、常に冷静かつ慎重、理知的な女教諭...
舞子
腐れ縁なのか、どこか頼りなさげでありながら、纏わる空気で誰に対してその懐に入る、情報収集能力に長けた..
池波。
二人の織りなす駆け引きと、彼らに降りかかる厄災が、本作品の読みところ。
幼稚園に巻き起こる不穏な空気は、始めは些細な事件であった。
警察も介入するも、イタズラとも受け止められ、本格的な捜査はほとんど行われず。
そんな中で起こった事件は、
幼稚園の存続そのものを脅かすほとの衝撃をもたらす。
事なかれ主義の園長の漏らした一言で事態はさらに悪化することに、
そして、二人はいよいよ進退窮まる寸前にまで追い詰められる。
初動捜査を誤った生活安全課の捜査員と共闘を組んだ二人。
怪しい人物に目論見を付ける中、共に聞き込みを行う。
そうこうしているうちに、
一人の、いかにも怪しげな女が捜査線上に浮上する。
幼稚園へのイタズラについては、自供を始めた女。
ところが、肝心要の「事件」については、真っ向から否定する。
そんな容疑者への面会に怒声を上げながら乗り込んできたのは被害者遺族。
彼らへの応対を間近で聞いていた舞子は、
ある違和感を覚える。
そして、舞子の取った行動は、自らも危険に曝すものだった。
真の犯人は一体何者なのか!?
予想外の結末が読者を驚かせる。
とはいえ、薄々見当は付けていたけれど。
エピローグ
中山さんらしい締め方。
単に犯人逮捕で終わらないのが中山流。
5歳児とのやりとりの中で、
心が洗われるひと場面が。
忘れている何かを想い起こさせてくれる一幕である。
実に面白い。