★★★★☆



不意に読みたくなる、


それが辻村深月という作家の魅力である、


ことに気付くのにそうは時間は掛からなかった。




家族シアター



正にタイトル通り、



様々な家族の形が、一枚のフィルムのように時に鮮明に、時に古き佳き時代背景とともに、

その一コマ一コマが大切な想い出として溢れ出す。



そんな、家族の形の目撃者となるのは、読み手である私..たち。




短編集。



どれも粒ぞろい。



お気に入りの一篇はすぐに見つけられるかも。



個人的に、イイナと思えたのは、



『タイムカプセルの八年』


そして、


『タマシイム・マシンの永遠』



どちらもタイム繫がりだけれど、脈絡は..たぶん、ない。



辻村さんらしいと言ってもよいのか、



ウィットを利かせながらも、


ここぞ!というところで、涙腺を刺激する一言を解き放つ。



よっぽどドラえもんが好きな作家さんなんだなぁと思う。




タマシイム・マシン



一瞬、タイムマシンかと聞き間違える。


登場人物たちも同じように聞き違える。


ただ一人を除いては・・。



ドラえもんを多少は齧ったことのある人間であれば、



ああー、あの場面!


と、密かな名場面が映像あるいは絵面とともに脳裏を過る。



そして、より一層の親密感を覚えるのだから、小憎らしい。



人間心理においては、並外れた洞察力、観察力の持ち主だと思う。



それを、ふとした表現に落とし込むのも、これまた小憎らしく、


再び、辻村深月作品を手にしたいと暗示を掛けられるのだから、


小憎らしさを超えて頼もしくすらある。



推本の一冊。