★★★☆☆



作者初の長編小説だと言う。


長編ミステリーとしては、やや荒削りな部分も見え隠れするけれど、


とても初めては思えない丁寧な構成は、読み易さもさることながら、


感情の機微が正面から伝わり、頁を捲る指にも自ずと力が入る。






二人だけの兄弟。


父を早くに亡くし、母親と三人、貧しくても心豊かに暮らしていた。



そんな生活が一変したのは、思いがけず遭遇した理不尽な事件。



酒に酔った男。



ナイフを振りかざし、滅多刺しとなった母。



兄弟は、母を失った。




裁判では、心神喪失が争われる。


理不尽な結末。




懲役六年。




そして、二人は成長した。


兄は一度は夢を諦めるも、再びボクシングの世界へと進み、


いよいよ、世界タイトルマッチを迎えることに。



弟は、結婚し、曲がりなりにも幸せな生活を送っていた。




そんな弟の目の前に、


偶然ある男の姿!?



あいつは・・・。



復讐の炎が上がる。



そんな矢先、弟に訪れる病魔。



余命は・・・。




そして、弟は、男の殺害計画を立てることに、


着々と進む計画。



いよいよ決行の時。


まさかの事態が・・。



ある程度想定の範囲内のストーリー展開。



無難、と言えば聞こえは良いけれど、


中途半端に謎が残された箇所が二つ、三つと。



決められた字数制限がある中では仕方ないのかなと思いつつ、


謎が残されたままというのはどうも具合が悪く。




ラストは、ありがちな締め。



もう一波乱!?くらい期待していただけに、やや尻すぼみ感は否めないけれど、


安定した締め括りと言えなくもなく。



ミステリーで、安定はやはりちょっと、ね。