★★★★☆



1994年


凡そ三十年前に上梓されたことに驚きを禁じ得ず。



本格ミステリー物として、現代でも違和感など微塵もなく。




「一体、あなたは誰なのですか!」




この言葉を眼にした時、一瞬心臓が止まるかと。

読み手だけは、初めから知っている。


この復讐計画を企み、事を起こそうと目論む犯人の正体を・・。



仕掛け、を分かっていながら、ミステリーとしての質を落とすことなく、


最後にまさかの大仕掛けを用意しているところに、


東野圭吾とい作家の凄まじさを思い知る。





『回廊亭』



舞台は、ある老舗旅館。


奇妙な造りのこの旅館は、かつて火事に遭った。



その火事で命を失ったのは、私が唯一愛した男、



ジローであった。



彼はなぜ死んだのか?



否、殺されたのか。






恋人の女は、復讐の刻を待ち続けた。


ただ、待ち続けるのではなく、


ある計画を決意した。



白髪の鬘(カツラ)を被り、一人の老婆へとその身を変え、幾月も変身がバレないように訓練を重ね、



そして、いよいよ


一族の集まる、その刻が、訪れる。




回廊亭に集う一族の面々。



亡き資産家の遺言状が明かされるという。



そして、また、その曰くつきの場所で、


事件が起こる。



そう、女にすら予期しない形で・・。




復讐相手は一体誰なのか!?






いよいよクライマックス。


そこで、読み手はあまりにも意外な人物の登場に面食らう。



なぜこの人物がここに・・。



しかし、彼女だけは、最後に真相に気付いた。


最後の最後に、彼女の取った行動は・・。



あまりに壮絶なラストに頁を閉じたあとも、幾らか放心状態に。





古い作品とはいえ、


未だ手にしていない珠玉のミステリーがまだまた眠っていたことに喜びに打ち震える。



次の出逢いも楽しみになってきた。