初めましての作家さん。
何故この物語を手にしたのか、
その時はこの「表紙」が目に留まり、引き寄せられるように、
気付けば本作を手にしていた。
官能小説!?
否、そこら辺の官能小説よりもむしろ表現、言葉は赤裸々なのかもしれない。
にも関わらず、
この、
心の奥底から湧き上がってくる『想い』は何だろう。
ミステリーとは異なる..否、ミステリー要素もしっかり盛り込まれている。
ただ、禁秘に触れたような感覚を覚えることは間違いない。
「老い」と「セクシュアリティ」
ありそうで無かった、この難しい...というより、敢えて触れることをタブー視してきた、このテーマに、
果敢に挑み、上辞されたのが、本作。
70歳。
巷では高齢者、お婆さん、と当たり前のように言われ、
愛だの恋だのとは無縁・・それが常識となっている社会..世の中。
SNSを通じて知り合った十五も年下の男...それでも、五十五である。
最初は警戒心剥き出しであった。
ところが、いつしか心が開かれていくようになり..そして、二人は会う約束を取り付け..。
確かにそこには70歳と55歳の二人がいる。
けれど、そんな年齢を感じさせない、ひたむきであからさまな「性」が描かれる。
気持ち悪い
ややもするとそんな声が上がりそうだが、気持ち悪さなど微塵も感じられず、
老いらくの恋
...こんな言葉も好ましくないけれど、老いとセクシュアリティを見事に描き切っている。
一つ一つの言葉に驚かされる。
映画やテレビでは決して採用されないからこその、舞台を小説という形にして、
躊躇われる言葉を、
ありのままに描いている。
誰しも、
否応なく訪れる、
老い。
それでも、幾つになっても、
心も身体も、
「疼く」
のである。
見ないようにするのではなく、受け入れることを突き付けられる。
終盤は、
ミステリー要素が突然顔を覗かせ、
時が止まる
そんな瞬間が訪れる。
本作は官能小説ではない、
けれど、読む時間、タイミングは、心してかからねば大変なことに。
読み手の心も身体も疼かせてしまう。