★★★★☆ 


初めましての作家さん。


何故この物語を手にしたのか、


その時はこの「表紙」が目に留まり、引き寄せられるように、

気付けば本作を手にしていた。



官能小説!?



否、そこら辺の官能小説よりもむしろ表現、言葉は赤裸々なのかもしれない。



にも関わらず、


この、

心の奥底から湧き上がってくる『想い』は何だろう。



ミステリーとは異なる..否、ミステリー要素もしっかり盛り込まれている。


ただ、禁秘に触れたような感覚を覚えることは間違いない。





「老い」と「セクシュアリティ」




ありそうで無かった、この難しい...というより、敢えて触れることをタブー視してきた、このテーマに、


果敢に挑み、上辞されたのが、本作。




70歳。


巷では高齢者、お婆さん、と当たり前のように言われ、


愛だの恋だのとは無縁・・それが常識となっている社会..世の中。



SNSを通じて知り合った十五も年下の男...それでも、五十五である。



最初は警戒心剥き出しであった。


ところが、いつしか心が開かれていくようになり..そして、二人は会う約束を取り付け..。



確かにそこには70歳と55歳の二人がいる。


けれど、そんな年齢を感じさせない、ひたむきであからさまな「性」が描かれる。




気持ち悪い



ややもするとそんな声が上がりそうだが、気持ち悪さなど微塵も感じられず、



老いらくの恋


...こんな言葉も好ましくないけれど、老いとセクシュアリティを見事に描き切っている。




一つ一つの言葉に驚かされる。



映画やテレビでは決して採用されないからこその、舞台を小説という形にして、



躊躇われる言葉を、



ありのままに描いている。





誰しも、


否応なく訪れる、


老い。



それでも、幾つになっても、


心も身体も、


「疼く」


のである。



見ないようにするのではなく、受け入れることを突き付けられる。




終盤は、


ミステリー要素が突然顔を覗かせ、



時が止まる



そんな瞬間が訪れる。




本作は官能小説ではない、


けれど、読む時間、タイミングは、心してかからねば大変なことに。



読み手の心も身体も疼かせてしまう。