★★☆☆☆
近未来の世界...日本。
司法制度は大きく変革し、国民総陪審員制度が施行される。
着眼点は面白い。
また、タイトルも意味深で、且つエンタメ性溢れる様相で、ページを捲る前から期待感は否が応でも上がる。
しかし、
しかしである。
小説を読んでいる..というよりも、何か堅苦しい論文を「読まされている」と感じるからなのか、
この違和感は何だろう。
具体的に殺人事件を扱っている。
被告人、
検察官、
弁護士、
登場人物はこれまでのミステリーとは何ら変わらない。
もちろん設定は大きく変わりはするが、
それでも、拭えない違和感。
そうなのだ。
本作では、
真実...真相はどっちでもよいのだ。
要は、国民総陪審員制度で、『一番投票が集まった』検察官の、指摘した被告人が、
最終的な、『犯人』とされる。
だから、
事件の解明なんてことは行われない。
正に、
ミステリーとして、ミステリーではない
のが、本作の根底に横たわる。
普通のミステリーであれば、もはや筆舌に尽くしがたい邪道そのものだけれど、
本作は、そもそもの設定がミステリーの解明ではないのだから、非難される云われは無い。
要は、
その根底が読み手の性に合うのか合わないのか...。
読後、私には、合わなかった。
当たり前に情報操作が行われる社会。
IT技術の進歩は、人工知能のさらなる進化を生み、
人間と人工知能の境目を見えなくしてしまう。
便利さ、効率化と引き換えに、我々が失うものとは一体...。
着眼点は面白い、
より、エンタメ性を持たせて紡がれてゆけば、苦痛なく読み進められたのかも。
残念ながら私には合わなかっただけのお話。