★★★★☆



その木に祈れば、願いが叶う



よくある、よく耳にするようなフレーズだけれど、



この作家にかかれば、たちまちエンタメ性に溢れ、人間味に溢れ、ドラマチックな仕上がりとなるのだから、本当に小憎らしい。




日本では、古来、


樹齢千年を超える樹には神が宿る..



御神木



として、崇め奉られてきた。



代表的な御神木としては、


杉、松、榊が真っ先に脳裏を過るけれど、



本作では、敢えて



クスノキ



としたところに、一筋縄ではいかない作家の矜持のようなものを感じるのは果たして考え過ぎなのか。




「祈願じゃなくて、祈念」




ファンタジー感満載でありながら、どうしてだか、現実のリアル感を身近に感じてしまうのだから、


作家の筆力には舌を巻くばかり。





一人の若者が、


ある日突然、クスノキの番人に選ばれた。



もちろん進んで番人になったわけではない。交換条件を出され、否応もなく受けざるを得ず、


訳も分からないままに番人となる。




満月と新月の夜に神社を訪れるのは、何やら訳ありの人々・・。



クスノキの番人には守らなければならない厳しいルールがある。



そのルールを覆すような事態が起こる。



果たして若者の運命は・・。




『クスノキの秘密』



・・自ら解き明かさなければならない。



いったいどんな秘密が隠されているというのか。



読み手にも分からない。



もどかしさでいっぱいになりながら、物語の世界へどんどん惹き込まれてゆく。



不快感はない

むしろ、少しづつ謎が見え隠れしてゆくことに鼓動も高鳴ってゆく。





そして、


いよいよその謎が明らかになる時、



羨望..の心持ちと、


実はとても恐ろしい狂気も秘めていることに気付かされ愕然とする。




ラスト。


そんなクスノキの秘密を凌駕したのは・・。



うーん..


思わず唸らずにはいられなかった。


もちろん、良い意味で。



何も、ファンタジーを描きたかったわけではないことに、ラストにして気付かされる。



またしても、東野圭吾という作家に魅了されてしまった。




千年杉



触れてみたくなった。