★★★★☆



・・・。


誰しもがいずれ迎える、老い。


今この瞬間、全くイメージ出来なくても、誰も避けては通れない。




超高齢化社会



いまさら感は否めないが、


在宅介護はこれからますます増えていくらしい。






義父は、定年退職後、妻と旅行へ出掛けたり、


これからは残りの人生を妻とともにのんびり楽しく過ごしていこうと思っていた。




そんな矢先、


妻のガンが見つかり、


あっという間に妻はこの世を去る。





義父には、娘と息子がいた。


二人とも結婚し、所帯を持っている。




迷惑は掛けられない




義父は一人暮らしをつつがなく送っていた。



毎日その日の出来事を日記に書き、


部首ごとに毎日漢字を10個書き連ね、


認知症予防にも余念はなかった。




それでも、


確実に、「老い」はやって来る。




散歩好きの義父は、遠くまで散歩に出掛け迷子になった。フェンスを乗り越え線路に入ったことも...警備員に呼び止められ事なきを得るも・・。





嫁は、ある日のニュースを目にして愕然とする。


踏切を押し入った認知症の老人が電車に轢かれ、遺族が訴えられ、賠償金を負う判決が出た、らしい。


そのほかにも、高齢ドライバーによる死亡事故等々..。




賠償金なんてことになったらどうしよう..




嫁夫婦は、なんとか運転をやめさせようとあの手この手で義父を懐柔しようとする。




年相応に老いていた義父であったが、


日を重ねるにつれて、ボケが進んでゆく。




そんな折、


介護ヘルパーの女性へセクハラ紛いの振る舞いを行い、嫁の逆鱗に触れる。



その後は..坂道を転がるように認知症の症状が進んでゆく。




ヘタに元気でいられるより寝たきりのほうが楽だ




そんな心無い言葉を耳にし、


義父の心はどんどん荒んでゆく。





誰しもが介護される側になり、誰しもが介護する側になりうる...


そんな差し迫る危機をどこか遠い国のお話のように感じている人間の何と多いことか..。





ただ、本作は、単に悲壮感溢れる仕立てにしているわけではない。



介護する側、される側の心情...胸の内を悉く詳らかにしてゆく。




認知症の義父は何を思い、どう感じているのか..これまで敢えて目を逸らしていた事実に、


医師ならではの切り口でメスを入れる。




施設に入る..入れることを否定するものではない。


ただ、日本では圧倒的に特養施設は不足し、民間ホームは富裕層にのみ許された安寧の場所と化している現状。


介護現場では、老人虐待やイジメも後を絶たず、最悪死亡事件も起こっている。



もちろんそれなりの対策を講じているのかもしれない。


でも、所詮、それなり、なのである。




すべての人間に平等に訪れる、老い。




キックバック云々している暇があるのであれば、待ったなしの、



超高齢化社会


少子高齢化


に、真剣に取り組まなければならないのではないか..



ちょっと真面目なお話になってしまったけれど、






本作ラスト



義父はいよいよその時..最期を迎える。



その瞬間、


背筋に流れるものは、暗く冷たい汗か、


それとも・・・。