★★★★☆
まさに短編の名手が描く、
至極のミステリー。
18編から構成。
一編一編は各々独立したミステリー仕立てでありながら、時折馴染みの刑事が登場するところは、作者の遊び心の現れか。
一編あたり僅か18ページでの起承転結。
タイトルにある、『道具箱はささやく』というストーリーは見当たらない。
つまりは、何が飛び出すのか分からない箱の中から、様々な色彩のミステリーが、
そっと囁やきかけるかのように語り掛ける..
そんな玄人好みの仕立てなのかも、
そう思えるほど完成度は高い。
短いストーリーの中に散りばめられた伏線に気が付けるか、
意外な結末に驚きつつ、
納得感のある仕掛けに、満足感が漂う。
長岡弘樹さんと言えば、
『教場』で一気にその名を広めた作家さんなのかも。
木村拓哉さん主演でテレビドラマ化されたことで、一気に知名度が上がった。
ドラマ化される前から、緻密に練られたトリックと、人間の喜怒哀楽を迂遠ながら真に迫る表現力で描く筆力には、
定評があり。
そんな作家の至極の短編ミステリーの中から、
自分好みの作品を見つけても良し。
気が付けば、どっぷりとミステリーの渦の中に浸かってしまっている自分がいるかも。