★★★★☆
カイン。
旧約聖書に登場する、カインとアベルの『カイン』である。
人類最初の嘘を吐き、
人類最初の殺人者である、カイン。
そんなカインに対して、神は「不死」を課した...
逸話である。
臓器移植に焦点を当てた、本格ミステリー。
10代の少年たちの遺体が次々と発見される。
腹部には、デタラメな縫合痕が・・。
調べを進めるうちに、いずれの少年たちも、肝臓が1/3だけ切り取られ、
その後縫合されていた。
肝臓の摘出はキレイに処置されているにも関わらず、縫合痕のなんと杜撰なことか・・。
見えてきた、臓器売買の闇。
いずれの少年たちも、「貧困」を抱えていた...。
飽食の日本
そう思い込んでいる国民。
そんな日本にあっても、貧困は至るところで蔓延っている。
厳しい臓器移植法が立ちはだかり、救える命が無惨にも廃れてゆく。
とはいえ、命の問題である。
慎重には慎重を来す日本の法律がある一方で、
某国では、
死刑囚が望めば、即座に臓器が摘出され、対価は犯罪被害者へと償われ、
摘出された臓器は、待ち望むレビシエント(患者)へと渡る。
臓器移植の経験を重ねる医療技術は向上し、臓器移植は一大ビジネスへと発展する、
一見すると、三方善しの臓器移植ビジネスと思えてしまうところに、
命を軽んじる危うさが見え隠れする。
しかし、
日本国内で臓器移植を行うことは実質困難であり、多くは何億とも言われる資金集めに奔走し、アメリカへと渡ってゆく。
国内で出来れば・・そんな葛藤が常につきまとう。
本作では、
タブー視される命の問題に正面からぶつかる。
何が正解なのか、
読み進めるうちに分からなくなる。
それでも最後には、
刑事の矜持が頭をもたげる。
これで大団円..そう思っていたところに、
衝撃のラストが読者を襲うのである。
全く予想だにしていなかった。
作者の痛烈極まるラスト四ページ。
久しぶりに、捲る指が震え、思わず力が入る。
なんとも辛辣な作者である。
それでも、
読み手に、正義とは、悪とは、を
深く、深く問いかける。