★★★☆☆
鵜飼杜夫探偵事務所。
此処、関東のどこか遠くの海沿いの確かに存在する街...烏賊川市。
この長たらしい表現一つとっても煩わしさこの上ないけれど、
その煩わしさもまた本シリーズの興味深いところ。
探偵事務所が入るビルオーナーは、うら若き女性、二宮朱美。
若くしてビル一棟を相続し、悠々自適...
と思いきや、
いつまでも家賃を滞納する鵜飼探偵の監視も兼ねて、今日も我が物顔で事務所へ入り浸る。
そんな中、訪れる奇妙な依頼人、そして依頼の数々。
お調子者で、とても有能とは思えない鵜飼探偵。
中学生のようなやり取りをするかと思いきや、時に鋭い観察眼を見せる。
完全に疑いの目を向けている朱美も、
どこかで鵜飼探偵を頼りにしているところも。
ありがちなラブストーリー!?
なんて展開も予想するものの、
期待とは裏腹に、全くと言ってもよいほど、そんな展開には至らない。
ライトノベルであり、読みやすいミステリー。
五編の短編から構成される長編物。
本作に関して言えば、
映像化した方が面白いのかもしれない。
言葉の掛け合いもさることながら、
ボケとツッコミがベタな展開ではであるけれど、
実写版として観た場合には、
文字面とはまた異なる絶妙な間...なんかも楽しめるのかもしれない。
物語自体は、
一見軽薄そうなストーリー仕立てだけれど、
解決編を読み終えると、
極めて論理的で実は理路整然としていることに気付かされる。
本屋大賞を受賞した、『謎解きはディナーのあとで』を描かれた作家さんだけに、
確かに面白い。