★★★★☆
大学の大先輩...石持浅海さんのサスペンス的ミステリー。
贔屓目なしに、一編一編にドキリとさせられる、
短編連作の長編ミステリー。
とある書店で見掛けた女性に目を奪われる僕。
確かに見惚れていたのだけれど、
それは疾しい気持ちではなく、
どこか神聖なものを見るような感覚。
その女性は、
なぜか左手に『ふたつの時計』をはめていた。
なぜ・・?
その疑問は最終章まで蓋をされる..。
それからしばらくして、
あの時の女性と卓を囲むことになる僕。
友人カップル二人と女性と、僕。
会話は自然とふたつの時計の話題へと。
あれこれ推理するけれど、真相をはぐらかす女性。
「お守りみたいなものなの」
そう意味深な言葉を残し、会はお開きとなる。
週掛けの月曜日。
何かに気が付いた僕は、女性にメールをする。
「今夜会って頂けませんか」
女性からの誘い。
そして、
ふたつの時計に秘められた謎(の半分)を解き明かした僕...
僕と彼女は付き合うようになった・・。
僕の名前は、直幸という。
両親が、幸せに向かってまっすぐに進んでほしい、そんな願いを込めて名付けてくれれた。
まっすぐに進め
タイトルにもリンクする。
けれど、
そんな単純な物語ではないことに、読み手は少しづつ、怪し気な何かを感じ始める。
最終章。
謎が明らかにされる。
彼女の口から発せられた事実に、読者は想像を超えて、驚愕する。
しかし、まっすぐな僕は、
別の解釈を下すことになる。
それは、全てを話し終えた彼女でさえ、
時の止まったままの歳月、全く予想すらしえなかった話。
それはあまりに、あまりにも・・、哀しくもあり、切なくもあり、一方で愛にも包まれた、
恐るべき・・否、驚愕という言葉すら陳腐に聴こえる、
真実!?
あまりの突拍子もない話に一瞬呆れそうになるけれど、
よくよく考えれば、辻褄の合う話であることに、さらに驚かされる読み手がいる。
ライト感覚で読み進めていたけれど、
とてもとてもライトでは収まらない、重厚なミステリー作品であった。
理学部卒業の作者。
理詰めの展開が妙にしっくりくるのは、
なるほどと唸らせられる。
しかし、本作品に横たわる
文学的才能も、
侮れず。
一気読み必至の作品であった。