★★★★☆



それなりに名を知られた出版社、丸栄社。



出版不況と言われて久しい中、


斬新なビジネスモデルで、新刊本を出版して、たとえ売れなくても、


利益を出しているという。





作家志望の日本人の何と多いことか。



職業作家とまでは言わなくとも、「本を出す」ということを夢見る、老若男女の何と多いことか。



一見すると、詐欺スレスレと思われるビジネスは、著者自身が、『喜び』を感じているから、摩訶不思議。




著者と出版社が費用をそれぞれ折半するという...



『こんな素晴らしい作品が世に出ないなんて・・』



そんな謳い文句が、素人作家たちの琴線に触れ、夢を見ることに。





世界中のインターネットのブログで、一番使われている言語は日本語らしい



たかだか一億人足らずしか使っていない言語なのに...



それだけ日本人が、自己承認欲求の高い民族なのかもしれない。




スポーツ...勉強...絵画...そんな分野では、ある種の才能が必要だけれど、

 



モノを書く




というのは、日本語さえ使えれば誰にでも出来る。



確かに・・。





本を出す...


一握りの文才ある人種の特権と思われがちだけれど、


ただ、出すだけなら、そんなにハードルは高くはない。



売れる売れないさえ気にしなければ、極端に言えば、金さえあれば出せるのである。



そんな人間の欲望に付け込んだのが、丸栄社のビジネスである。



夢を売るお手伝いをしていると信じて疑わない。





そんな出版社に、ライバル会社が出現。


低価格を謳い文句に、発刊数を着実に延ばしている。


ビジネスモデルはほぼ同じ。


ただ、ある一点を除いては・・。



丸栄社は果たして生き残れるのか。






ラスト。


編集者魂を窺わせる一コマがサラリと描かれ、


モヤモヤとした胸の内が、一気に霧散することに。






ちなみに、、


一日平均、活字を読む時間は、13分らしい。


その中には、雑誌や漫画も入っている。



小説等に絞れば、一日平均3分足らず、という現実に愕然とする。




漱石や鴎外や芥川が持て囃された時代。


ネットや漫画、テレビなども無い時代に、小説...活字は、大衆娯楽としては唯一ともいえる存在であったらしい。




今は、


映像、漫画、アニメ、ゲーム、ユーチューブetc...無限の娯楽が犇く中、


敢えて活字を趣味とする人間は希少価値があるらしい。




タブレット小説が、


じわりじわりとシェアを増やす中にあっても、


紙の単行本、文庫本にやはり愛着を持ってしまうのは、


決して私だけではない...と信じている。