★★★★☆
猥褻?
猥談?
そもそもこんなタイトルで出版出来るものなのか?
色んな想像を掻き立てられるけれど、
インパクトは計り知れない。
比喩...例え...そんな先入観とは無縁。
額面通り、
『夫のちんぽが入らない』お話なのである。
冗談でもなく、真面目なのである。
ジャンルを問わず..を信条にしている私。
純粋に本が好きな私でも、
本作...ハードカバーの単行本を手にして、レジへ向かうのは、甚だハードルが高かった。
しかも、そういう時に限って、大学生風の女性店員。
別にいかがわしい本を買おうっていうのではない。
読んでみたら分かるのである。
裏を返せば、
『読まないと分からない』のである。
表情に現さず、高鳴る心音を聞かれないように淡々と購入・・。
そこまでして読みたいのか...。
棚の片隅に置かれていて、
このままのタイトルで出版されたことの意味を知りたかった...
その理由を知りたかった。興味が尽きなかったのである。
病の話でもない。
なぜなら、夫以外のちんぽはちゃんと入るのである。
真面目なお話。
なぜ夫のだけが入らないのか。
人並み以上に大きいのか。確かにちょっとは大きいのかもしれない。
それにしても、いざ入れようとすると、裂けてきて、血まみれになるのである。
あまりに生々しい描写のため、ここでは記せないけれど、
その行為を現した描写を読んでいると、まさに引く。
何も、「入らない」ことだけの物語ではない。
実話なのである。
驚きしかない。
大学生の二人。
田舎も田舎、ど田舎から出てきた女子大生が入居したのは、古いアパート。
隣の隣の部屋に居たのが、夫となる年上の大学生。
奇妙な出会いから、
ある夜、結ばれることに・・なるはずが、入らないのである。
結婚した二人。
何度もチャレンジしてみるものの、やはり入らない・・。
教師となった二人は、それぞれ別の学校へ赴任することに。
妻が受け持つこととなったクラスは、俗に言う、問題のあるクラス。
無難に過ごしていたと思いきや、ある日を境に、クラスは荒れてしまう。
死をも意識するようになる妻。
そんな妻は精神を病み、
彼女はとんでもない行動に出る・・。夫には言えない。
そして、夫は、
入らない妻を責めることはしない。
しないが・・・。
実話であることに、
改めて衝撃を受ける。
一介の主婦が、同人誌に掲載し、話題となった作品。
単行本化されるにあたり、題名を変えようとした作者を押し止めたのは、まさかの出版社であった。
「このタイトルだから伝わるのです」
英断を下した経緯は、あとがきに。
読み終えて、
人間それぞれの生き方へ、あれこれ周りが常識を当て嵌めることの怖さを思い知った。
濃密な一冊。