★★★☆☆
まさに、
「人さらい」の物語。
意味深な表紙絵..。
小学生の女の子が誘拐された。
父親は都市銀行の支店長。
母親は美貌の持ち主だが、高慢。
警察の徹底した包囲網を嘲笑うかのような犯人の戦術。
身代金の受け渡しが犯人逮捕の絶好の機会..万全を期す警察..
果たして・・。
序盤から中盤にかけて、
正直なところ、よくある誘拐ミステリー..システムは多少異なるけれど、大筋ではそう奇抜さがあるわけでもなく、
期待はやや下がり気味。。
そんな下火なキモチを一気に押し上げたのは、
激流のような終盤。
まさかこんな『答え』を用意していたなんて..。
それまでの下降曲線は、終盤への伏線だったのか...
中盤までの単調さが、一気にひっくり返る終盤..
終章だけでも一読の価値はアリ。そこまで辿り着く忍耐は多少必要だけれど。。
この終章を用意しているのであれば、
前中盤をもっと迫力ある展開にしても良かったのかも..と思うのは、
もちろん読み手の勝手な理屈。。
本作。
父親はエリート銀行員。
出世頭として、数々の非道な仕打ちを行ってきた。
ただ、銀行は営利企業であり、非道であれ、銀行として、「益」であれば評価される。
そんな男が融資の打ち切りをしたことで、一家心中を図った家族がいた。
動機は怨みなのか。。
読み手は、そんなありきたりさに引きづられるように読み進めるため、
間延び感を感じてしまう。
だが、ラストで描かれた衝撃の動機を知った時、それまでの間延び感が一気に覆される。
一つ難点を言えば、
そんな衝撃の動機へ至る伏線があまりにも乏しいために、全く気付く術(すべ)がないこと。
多少でも「匂わせ」があれば、評価はまた変わったかもしれない。