★★★☆☆
江戸川乱歩賞受賞作。
なるほど。
練りに練られたトリックと乱歩を彷彿とさせるような場面展開は確かに納得。
一つだけ難点を上げれば、展開があまりに複雑過ぎて、頭の中の整理だけでは道に迷ってしまうこと...
そこが乱歩とは大きく異なるのかも。
乱歩小説ばりの冒険活劇にも見えなくもないが、「分かりやすさ」の点では決定的に異なる印象。
とはいえ、ミステリーの醍醐味を思う存分発揮された作品。
誘拐児
タイトルそのままに、
冒頭、ある誘拐事件から幕が開ける。
戦後の混乱の中で、
誘拐犯との金の受け渡し。
唯一のチャンスとばかりに、袋のネズミ状態にまで固めた警察。
そこで、思いもかけない出来事が起こる。
奪われた身代金。
返らない子ども。
そして、十五年の時が流れ、
再び事件が首をもたげる。
おれは、もしかして誘拐された...
そんな疑念を起こさせる、亡くなる間際に母から発せられた一言。
苦悩する若者と彼に想いを寄せる女性
母の生い立ちを探るうちにぎわくは深まるばかり。
そんな時、一人の女性が殺害される。
彼女はどうやら何者かを脅していたようだ。
その脅していた相手とは、まさか・・。
とにかく、物語の展開が忙しく、多少ミステリーに読み慣れた私も、時々に整理しないと、今どの場面なのかと混乱を来してしまう。
終盤。
複雑に絡み合った線がようやく一本の線に繋がるや否や、
それまでの疑念は一気に晴れ...
乱歩賞受賞も頷ける。
本格ミステリー。
筆力には脱帽。