★★★☆☆



元検事が描いた、贈収賄事件を題材とした、法廷闘争劇...

+αとして、恋愛劇を絡めたところがちょっぴり異質か。



恐らく、堅い法廷闘争に柔らか恋愛を加えることで、マイルドさを醸し出したのかもしれないが、


現代からすると、やや浮世離れした感が否めず、ちぐはぐ感も。


ただ、描かれたのが、今から三十年ほど前だとすると、頷けるのかも。





公共工事入札を巡る贈収賄事件。

果たして現金を渡したのか渡していないのか...


証人尋問と被告人の供述の曖昧さ...自供したはずの事実への穴...



新進気鋭の弁護士のアメリカ流の攻め口に苦境に立たされる検察...



様々な思惑が交錯する中で、果たして裁判所はどう判断するのか...




本来緊迫する場面で、なぜかのんびりした空気が漂い、

シリアスなはずの法廷でのやりとりが、どこか世間的な雰囲気が漂うのは、


恐らく作者自身が意図的に読者にも分かりやすく描いたのであろうことが窺える。




「否認」



被告人は最後まで、否認していた。


それにはある理由があったのだ。


読み手は気になって仕方がない。




終章でいよいよその秘密が明らかになる。



その秘密の受け止め方は読み手それぞれ...



私は、

やや拍子抜けしたけれど、



純文学的観点から言えば、「それ」もありか...




ただ、

本作は「純文学作品」ではない、

と思う。