★★★★★



未だこんな作家さんがいらしたなんて!


執筆を始めたのが齢88...遂に刊行されたの
は90を優に越え、遺作となった(と思われる)作品との出逢いは正に幸運であったやも。


あの江戸川乱歩さんが序文を寄せたという話を耳にした時には震えが来た。


同年代を生きられた作家のミステリー。



決して古めかしくなく、ナレーションを醸し出す文体はスラスラと脳内を駆け巡る。


表紙絵のどこかおどろおどろしさを思わせる雰囲気も物語に華を添えこそすれ、決してホラー物といったものではない。




一人の少年が轢き逃げ事故で命を落とすところから物語は始まる。



唯一の目撃者であり、少年の最期を看取ったであろう男。


哀しみにくれる「姉」の紗江。


証言を聞いているうちに、衝撃が全身を駆け巡る...



轢き逃げ犯人は一体誰なのか。



巧みな心理描写と語り掛けるようなストーリー展開に手を止められなくなる。




交通事故の加害者は決して死刑にはならぬ



こんな理不尽が赦されてよいのか!



作者の心情を吐露するかのような叫びが読後、得もいわれぬ感慨に包まれる。



とても米寿を過ぎた方の作品とは・・・。


他の作品も無性に読みたくなった。