市の社会福祉課が認知症に関する講演会を開いてくれた。定員80名の予約制だったが、私は運良く登録できて出席してきた。全体のテーマは「認知症と共に生きる」で、お二人の講演があった。全体的にいえば若年性認知症に関するお話で、とても有益なものだった。席は満席で講演会としては成功だったようだ。
講演者のお一人は、「公益社団法人認知症の人と家族の会」の理事で、神奈川県支部の副代表と紹介されたM氏で、演題は「認知症と共に生きるー忘れても心は生きているー」、お二人目は「県オレンジ大使」(1)のSさんでテーマは「若年性認知症をもつ本人にお話」、だった。お二人とも立派な肩書きをお持ちでなにか難しいお話かと思ったが、実際には穏やかな話でよかった。
M氏の話は実体験に基づくものなのでとても説得力があった。講演も慣れておられるようで、1時間余を流れるようにお話しされた。この手の話に多い悲壮感はあまりなく、参加者を励ます口調が説得力を持っていた。
Sさんの話は、若年性認知症コーディネーター(2)の方の質問に答えるというかたちでなされたが、特にこれという話はなされず、もっぱらコーディネーターの方が話しておられたのは少し残念だった。致し方ないといえば致し方なかったのかもしれない。
M氏の講演の論題だけを紹介しておきたい。
①私の家族、及び介護状況
②妻の介護体験
③孤軍奮闘のリハビリ
④コロナ禍での面会
⑤家族会・認知症カフェ
⑥共に生き ともに歩もう 認知症
M氏は奥さん、両親二人の計三人(要介護4と5)を20年間介護されたということで、その苦労と努力は想像を絶する。ただただ頭が下がった。
配布されたレジュメの中にとても貴重な情報が含まれていたので、念のために記録に残しておきたい(3)。
【認知症の人が使える社会資源】

問題はこういう多様な政策(社会資源)がどれも申請主義に基づいているということらしい。知らなければ、申し込まなければ、もらえません(サービスを受けられません)、ということのようだ。私もいくつか該当するものを申請したことがあるが、市役所の中をたらい回しにされてお終いだったという苦い経験がある。たらい回しどころか最初は他のサービスは教えてさえもらえなかった。現在の日本は申請主義なのだから、以下のM氏の言葉は重かった。「認知症を治療するのは、薬ではなく、知識です」(4)
注
1 オレンジ大使とはどういうものかよくわからなかった。
2 若年性認知症コーディネーターは各県に配置されているらしい。どうも本人と関係機関との調整役らしい。若年性認知症に特化された役割らしい。ケアマネさんみたいな仕事なのだろうか。神奈川県では県内10カ所に配置されているという。
3 転載の許可はいただいていないが、レジュメでは参考資料と題されているので、載せさせていただいた。
4 表題にも書いたが、今回のような有益な講演会のパンフレットのキャッチフレーズが「安心して認知症になれるまちへ」はいただけなかった。認知症になっても安心して暮らせる町、という意味なのだろうが、なんともやるせない表現だ。認知症になりたい人などいるはずがない。認知症の相手を四六時中介護している人にきれい事だけでは説得力がない。これだけ立派な講演会を開ける関係者がこの表現に納得しているのだろうか。この日本語をどう英語に訳するのだろうか。