鍛造ナイフだろうと、整形は
手ヤスリで仕上げていく。
日本刀の場合もセンがけとヤ
スリで整形する。
鍛造ナイフも同じだ。
モーターツールを使えば楽に
できるが、繊細な髪の毛1本
程の造形の違いを出す事は電
動工具では難しい。
初期ではモーターツールを使
う事はあっても、最終的には
手ヤスリで仕上げていく。



広島県呉市で製造されるヤスリ
は世界一で、切削力が物凄い。
正味のところ、ニコルソンも持
っているが、ニコルソンよりも
呉のヤスリのほうが優れている。
これ、ほんと。
このヤスリ1本で割引価格でも
5,000円以上の金額がする。通
常販価は7,000円~15,000円程
の技能五輪用の製品ライン物。



鑢(やすり)がけというのは、昔
は鉄工業界には鑢職人という職
種があり、ヤスリがけだけで飯
が食える程だった。鑢一丁だけ
で妻子を食わせていける。一丁
といっても、使うのは多種のヤ
スリだが。
現在、鑢がけ専門職はほぼ絶滅。
ただし、その技術は日本刀の刀
職の金工師たちには受け継がれ
ている。鑢がけがまともにでき
ないと刀の鎺(はばき)ひとつ作
れない。


まだまだ成形&整形中。
これは実験的な太目のタング形
式狙い。



ヤスリがけのごく初期の段階。
市販量産刃物はこんな刀のよう
なことをやってられないので、
モーターツールでガーッと一気
に削る。
だが、一つ問題が発生する。
それは残留応力が蓄積するのだ。
これは焼入れした際にてき面に
出てきてしまう。
手仕上げだと細かい所まで入念
に仕上げる事ができるし、残留
応力蓄積への影響は非常に少な
い。
鍛造により初積炭化物の偏在を
除去して均一に均し、さらに焼
鈍により応力除去しても、片方
ばかり削ってからまた裏側を、
というやり方をモーターツール
でやっていたら、確実に残留応
力が蓄積する。


さらに焼入れの際には、コーナ
ーエフェクトを除去する加工を
施せば焼入れで失敗は無い。
刃先などは角を取って丸くして
おくのが炭素鋼刃物での焼入れ
の基本だ。
これは鍛造刃物製作者だけでな
く、日本刀でも冶金学の心得が
ある刀工(しかも切れ物作者)は
必ずやっている。


ベルトサンダーは非常に便利だ
が、手ヤスリ仕上げのほうが間
違いは無い。
私は小柄小刀などは完全に手ヤ
スリで造形仕上げをしていく。



削りの整えのほんの最初の段階。






上:プロトタイプA
下:プロトタイプB


どちらも焼入れ前の仕上げ成形
はまだまだ先。
プロトAは茎(なかご)=タングを
短くカットして仕上げる。

細い茎(なかご)の和式打刃物は
過去に鍛造で作った経験はある。
折返し鍛錬後の康宏刀の残存部
分を貰い受けて鍛造して。


ふくら=ベリー部分のRはノギス
で測らずとも、勘で削って整形
していても、AもBもほぼ同じ
Rが出せる。
それは、水心子の書籍から学び、
また数えきれない日本刀とナイ
フを実際に肉眼で観て来て習っ
た規矩が私の中にあるからだ。
実質の内実は「習うより慣れろ」
の「慣れ」の問題。
実践するからこそ見えて来ると
いう事は世の中多い。