
私が勤務していたあるメーカ
ーの製品のある個所がどうし
ても過酷な使用状況で雨水の
影響で錆びる不具合が多発し
た。
そのパーツを丸ごと内部をパ
ーカーライジング処理する事
が製造会議で決定し施工した。
営業責任者と設計者の意見が
ぶつかるのはどこでもメーカ
ーの常だが、設計者はどうし
ても現状構造に基づいての改
善のみに固執したがる。営業
は抜本的改善や変革を現場の
声のフィードバックとして社
内要求のプレゼンで展開する。
社内対立はするが、双方とも
製品の品質を良くしようとの
思いからの対立だ。
結論的に、その部分にSUS採
用という業界初の英断により
不具合は解消した。SUS採用
は下請けのステンレス加工が
可能なプレス機器をも確保し
ないとならないので、事業と
しては大胆な方針転換であり、
単なる部材変更の域では収ま
らない。
最初はそれゆえ表面の防錆処
理方法の変更に留まっていた。
だが、それでも道路上の凍結
防止剤の塩化カルシウムの強
烈な作用により出錆してしま
う不具合が全国から報告され
た。ただのちょろちょろっと
した錆ではない。ボロボロに
錆びて鋼材が朽ちて構造体そ
のものの剛性に極めて深刻な
被害が出るのだ。
東京本社幹部会議で営業の提
案プレゼンにより、思い切っ
てその部品を丸ごとSUSに変
更して標準仕様とする事をメ
ーカーは採択決定、実行した。
原価も販価も跳ね上がるが、
販売成績は営業力と品質向上
の訴求でカバーできると私は
踏んだ。事実上、競合他社の
シェアを私は食いまくってい
て、ライバル各社から「あい
つを潰せ」とまで言われてい
た事実があった。ごっそりと
それまでのお客さんを私に取
られてしまったのだからそう
なるだろう。工業界内企業連
合会議では談合否定ながらも
法には触れない範囲での市場
情報交換等で表面上競合共生
を装う構造があったが、実質
的な販売現場では戦争状態と
いうのが競合マーケットでの
実態だ。
汚い策略を用いず、正々堂々
とまっとうで真摯な営業活動
をすれば必ず確実に実は結ぶ。
それはドラマ「下町ロケット」
のように。あの作品はかなり
リアルであり、絵空事の空想
創作物語ではない。極めて似
たような業界に私はいたので、
これは現実としてよく分かる。
製品が実を結ぶには、生産部
門をこちら側に引き寄せる事
だ。第一次産業のユーザーの
声や希望こそが基本にあり、
彼らの希望の実現を基軸にし
ない製品製造や営業販売など
はあり得ない。
不具合によるクレーム処理費
用や実質的な現場で使用者が
困る状況改善には部材の材質
そのものの変更以外には道は
無かった。
私たちの製品が不具合になる
と、国民の牛肉、豚肉、鶏肉、
鶏卵等々の食品流通に大きな
支障が出る。国民の日常的な
食生活に深く関わる業種を担
っているからだ。
併せて、周辺の関連パーツも
SUS化した。かなりの値上げ
になるが、それにより一連の
出錆不具合問題はすべて解消
された。
亜鉛メッキのボンデ鋼板だけ
では、過酷な状況下で使用さ
れるものについて防錆に対す
る耐性は芳しくなかったのだ。
パーカーライジングは銃器の
防錆処理として広く使用され
て来た。
だが、経年変化で表面加工は
剥げて金属の地が露出してし
まう欠点がある。
左の銃はパーカーライジング
が剥げて金属の地が露出して
いる状態の自動小銃。
