映画『ランボー』(1982)で主人
公シルベスタ・スタローンが演
じるベトナム帰還兵のランボー
が使用した大型サバイバルナイ
フは、米国人のジム・ライルが
制作した。
このタイプのナイフはハンドル
部分が空洞で多くの緊急キット
を中に入れておける造り。ハン
ドルエンドにはコンパスが付い
ているモデルもある。



ジェームズ・ビューエル・ラ
イル(1933-1991)。アーカンソ
ー州ホープ群ラッセルビルの
工房にて。ラッセルビルは人
口27,900人程の田舎町。



ラッセルビルの位置。




ジム・ライルはアメリカンナ
イフギルドの会長を務めた。
ナイフ職人となったのは1971
年38才の時からだった。1984
年カトラリー殿堂入り。ボウ
イナイフが得意だった。
映画ランボーシリーズでは3作
目までの登場ナイフを彼が制
作した(その後日本製)。
彼の作るナイフの特徴は440C
のステンレス鋼材を鍛造して
から焼き入れ処理に回し、強
靭な切断力を発揮する頑丈な
ナイフを作っていた。曰く、
「航空機のボディを切り裂く」
との触れ込みだった。

なお、日本国内でステンレス
鋼の鍛造ナイフを制作したの
は、知られるところでは稀代
のピッケル名人作者の二村善
市氏のみかと思われる。
SUS鋼もクロムが多いだけで
鋼であるので、D2にしろSUS
材にしろ、本当は鍛造したほ
うが内部素性は良質化するの
だが、一般的には板材にする
際に圧延鍛造状態となるので
更なる鍛造は不必要とはいわ
れている。
だが、鋼材自体の変態点に一
度加熱してから適正冷却をさ
せて焼きならしと焼きなまし
を行い、鍛造してから火造成
形と削り整形を行い、さらに
また一度焼きなましてから焼
き入れ工程に入ったほうが、
一層鋼の良質性を得る事がで
きるだろう。残留応力除去と
いう冶金学的観点からも。
ただ、ステンレス特殊鋼の場
合は一定の適正温度保持時間
が数時間というものであるの
で、専用大型炉などを有する
熱処理専門業者でないとステ
ンレス鋼材の焼き入れと焼き
戻しはできない。
炭素鋼の鍛造焼き入れ炉では
温度が安定せず(数時間もピタ
リと一定温度で保持するのは
不可能)、ステンレス材は個人
では熱処理不能だ。
炭素鋼の優位性は、個人炉の
ような極めて小規模な炉であ
ろうと熱処理が可能な点だ。
クロム含有量が少ない純炭素
鋼の最大の欠点は錆びやすい
事が挙げられる。
また、強度と硬度においても、
炭素鋼は最新の合金鋼には劣
るが、利便性が高いので現在
でも多くの機械部品や刃物に
炭素鋼が使用されている。

ステンレス専用熱処理炉。



こうした大規模な炉を備える
専門工場でないとステンレス
の熱処理は不能。
焼き入れも焼き戻しもサブゼ
ロ処理もできない。