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ケルリズム

ケルピィの頭の中、公開します。

コリーヌベイリーレイの歌声は、耳から入って来る暖かいひだまりの粒みたいで、

足の先から静かにゆっくり溜まっていって、体を少しずつひたして行って

頭までたっぷり満たされると目頭から溢れそうになる。

 

最初に聞いた時も、旦那さんが麻薬で亡くなった後にカムバックしたのを聞いた時も、今夜も。

 

私の大好きなアーティストの一人で、辛い時に取り憑かれたようにリピート再生する曲のリストにも

必ず彼女の曲が入っていた。

 

赤坂BLITZで行われた単独公演。

前日の大阪公演に引き続き、オープニングアクトのIRIから30分程度で勿体ぶらずにサッと出てきた。

ライブハウスの規模からは想定しえないくらいのミニマルなセットで、

ドラム、ギター・コーラス、キーボード・シンセベース・コーラス、そして彼女の4人のみ。

青緑のベルベットのホルターパンツスーツにアクセサリーもつけず、

彼女は最新のアルバム "The Heart Speaks In Whispers" の "Been To The Moon"のイントロで入ってきた。

しかも、イントロで結構話す。

イントロというより、曲のコード進行を使ったトークの間のBGMといった感じだ。

20席くらいの古いジャズバーで毎週やってるホストバンドが慣れた感じで演奏し始めた雰囲気。

彼女は大きいステージに立っても、あくまでライブ感を楽しみたいんだというのが伝わってくる。

 

ファーストアルバムから"Breathless"、そして"Till It Happens To You"。

羽根みたいに広げた腕が華奢でとても長いことに気づく。

曲間に見せる笑顔は目尻と口角がくっつきそうな屈託のなさで、その笑顔が自分の目尻も下げるスイッチになる。

 

か、かわいい…

 

「日本に来たのは3回目だけど、今回やっと桜が咲いてるのが見られたの」

と始めたのはコートもいらない夜が気持ちいい春を歌った曲という"Green Aphrodisiac"。

後半の「ナナナナナ」では観客だけが指を鳴らして、歌って

コリーヌはマイクから口を外してアドリブで歌ってる。

それオンマイクで聞きたいんですけど!笑

この広さじゃ後ろの方はなかなか聞こえないー

 

そんな観客とのコミュニケーションを、手を叩かせたり、歌わせたり、

ライブを通じて何度も楽しんだ。

 

「次の曲は恋に落ちた相手との関係が難しくて

それでもこれが自分が決めたことだ、正しいことだって信じて

『やり直しても同じことをする』って思って書いた曲です」

と始めた曲が私の号泣警報が発動した”I’d Do It All Again”。

しかし、ギター弾き語りのイントロ終わりあたりでコードを一つ間違えると

「やっぱりもう一回始めからやり直すわ、ニール・ヤングやパティ・スミスすら

間違ってやり直してるの見たことあるからあたしもやっていいよね」と言って

最初からやり直し始めた。

号泣警報が号泣注意報に変わった。笑

「じゃあ説明が終わったところからやるわね」

そんなお茶目さも、スキのない完璧なスーパースターやアーティストとしての風格ではなく、

大勢のお客さんの前でもあくまで自然体でいる彼女の魅力だなと思った。

号泣注意報は事なきを得たけど、彼女を見る気持ちは暖かさを増した。

 

「今日話してた日本の記者さんが言ってくれたんだけど、

次の曲はその人が新しいアルバムで一番好きって言ってくれてる曲で

いろんなアーティストの影響が見られるって言ってくれたわ。

私のヒーローの一人、カーティス・メーフィールドもそうだし、

ヴァレリー・シンプソンのかけらも入ってる」

と言って歌ったのが"Do You Ever Think Of Me?"ほんとにMakings Of Youにそっくりだ。

 

ファーストでおそらく一番有名なPut Your Records Onが始まると観客から歓声が。

 

最後にやった曲は”The Heart Speaks In Whispers”の1曲目に収録されている、”The Skies Will Break”。

苦しい時期を乗り越えることを書いた曲だという。

誰しも苦しい時期というのはあるけど、

そんな時期を好奇の目に晒されながら乗り越えて来た彼女から

「雲はあなたのために晴れる 終わるまでそう遠くはない」という確固たる意志が飛んで来た。

 

アンコールはもちろん、残ってるあの曲、「もう一曲やる曲があるの」と"Like A Star"を。

たっぷりの1時間半以上のセットリストで満腹な夜を残して、

彼女は満面の笑みでステージを後にした。

 

一言いうなら、ベースとコーラス入れればいいのにーということ。

彼女のレコーディングされた音源は、

私からするとパティシエが丁寧に繊細に仕上げてる洋菓子のようなもの。

曲が成り立つ上ですごく重要な役割をしている楽器が曲を通して

一瞬しか出て来なかったり(上に数滴乗ってるキャラメルソース)

間を縫うように入ってくる楽器があったり(中に入ってるいちごのピューレ)

とにかく精巧で、再現するならどうしても編成で足りないなーと思ってしまう曲があったのは

正直否めないところ。

全然違うアレンジならそれはそれで新鮮な目線で見れるんだけど、

あくまで音源ベースのバンド演奏だとそう思えてしまった。

あとは、ギターの人もキーボードの人もめちゃくちゃ歌上手いけど、

曲が盛り上がって彼女がアドリブに入るところで

気持ちよく上に乗っかれてない感じがしたんだよなぁ。

自分で地メロも歌いつつだったし。コーラスががっつりサビを後ろで歌ってて

彼女は自由に歌う、っていうのがありきたりではあるけど効果的だろうな、と思った。

というシンガー目線なコメントでした。

 

贅沢だけど、もっとこじんまりしたところで聞く方が、

彼女の魅力がもっと感じられるんじゃないかと思わずにはいられないライブでした。

 

 

セットリスト

Been To The Moon

Closer

Breathless

Till It Happens To You

Green Aphrodisiac

Is This Love

Paris Nights/New York Mornings

Stop Where You Are

I’d Do It All Again

Horse Print Dress

Do You Ever Think Of Me?

Put Your Records On

Trouble Sleeping

The Skies Will Break

[encore]Like A Star