【VOX MV50トータルインプレッション】

by ケリー サイモン (Kelly Simonz)

 

プリ管に新世代の真空管を使用したというこのアンプはコンパクトサイズで非常に迫力のあるサウンドが得られる上に価格もお手頃ということで、僕のように「小規模でのライブのために使用する」という機会がある人なら1台は持っておいても損はないと思います。

 

ただ、当然ですが僕自身フルチューブ(真空管)アンプを長年使用してそのメリットもデメリットも承知の上で愛用しているわけですから、それと全く同じというわけには行かないのも事実です。そんな事は言うまでもないでしょうが、すぐにそういうアンプに引けを取らないなどという謳い文句が出たりするのでそこは僕はきっぱりちがうと言わせていただきます。

機材というものはそれぞれの利点を活かすことが重要であって、マーシャルであってもCODEというフルモデリングアンプは僕の使っているオールドマーシャルとは同じものではないですが、自宅での練習などでは圧倒的に使い勝手がいいわけでこの手の機材は「一つだけで事足りる」というものはほとんどありません。やはり幾つか所持していないといけないものなので、サウンドも十分に使える上に、価格もお手頃で場所も取らないとなれば1台はもっておいてもいいかなという事になります。

正直僕は李氏本人に少し改造してもらってより良い音にしてもらえるかというヤラシイ根性もあったのですが実際に箱から出したものをそのまま鳴らしてみて、ゲインとトーンとボリューム、そしてインピーダンススイッチの調整だけで自分好みの音に近づけることが出来ました。もちろんそれは手元でのコントロールがいちばん重要なので誰でも僕のセッティングで同じ音が出ることはありませんが、いちばん大切なのは「自分が出したい音が明確であるか」なのでそこは自分自身で経験を積まねばならないとおもいます。

 

本来僕のようなピッキングのスピードが速いスタイルはトランジスタのほうが向いているのですが、やはり元々なれている真空管のタッチに安心感を覚えるのと、もっとも重要なロングトーンでの音の太さこそが、未だに真空管アンプを使用している大きな理由になっていますが、スピードピッキングへのレスポンスはやはりこういったタイプのアンプのほうが手応えは感じました・・それに何よりなぜギターアンプが大型で出力が必要かという理由は、昔はPA機材が今のように発達していなかったことと、ドラムという生の大音量が出る楽器とのバランスを保つためだっとのだと僕は考えています。

 

しかし今の時代PAの発達により蚊の泣くような声でもドラムのヘッド(打面)を軽くチョンと叩いてもPAの方でビッグ・サウンドにしてもらえる時代なので、僕自身50ワットのアンプですらフルボリュームにしたことが最近はありません・・バンドとのバランスや外音(PA)との兼ね合いを考えるとあまり大きな音は出せないのです。だからこそアンプのスタイルも変わってきたのだと思います。

それでも僕のバンドは僕のギターがでかく音が抜けるのでドラマーの生音には厳しく教育してきました。Yosukeは他のバンドでは音がデカイといわれ悩んでいるようですが(笑)僕がアメリカで一緒にやってきたドラマーなどはこんなものではなかったのではっきりいってもっと大きくなってもらいたいぐらいです(笑)

 

というわけでドラムなどのアコースティック楽器ひとつとっても昔との音量が全くちがう(楽器はなるようになったけど実際に叩く音はかなり小さくなっています)ので、一概なにがいいかというのではなく「どのシチュエイションで使用するか」が重要になっていると感じます。

 

なので今回のMV50はバースデーライブと大阪のギタートルネードで使用する予定ですが、2つのイベントでの使用目的は全くちがうのでそこのあたりもしっかりと考えて使ってみたいと思います。

 

まぁいうまでもありませんが、キネマ倶楽部でのライブではマーシャルの壁が最も重要になりますが、壁の後ろに実はMV50がおいてあったなどということはありませんのでご安心下さい(笑)もちろん僕はマーシャルの「見た目」が好きですが、それ以上に僕にとっては何より音が一番重要ですからね。

そもそも大型アンプの良さを語るならその音量をコントロールしてからいうべきですからね、何より面倒で難しくやりがいがあるものですから。

 

まぁ結論としては、会場に手頃なチューブアンプがない、荷物を極力減らしたいなど必ずそういったシチュエイションがあるであろう機会に非常に役に立つ一品だと思います

http://www.voxamps.com/MV50