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Falling Fast

自分の言葉に溢れたい

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通過待ちの列車が遅れている為
発車に三分遅れる

区間準急という名の各駅停車
駅に停まるごとに
遅れたことへの謝罪アナウンス

何分までにどこどこ
という目標を持っているものは
乗り換えに間に合わないなどの
焦りが生まれる

右隣には
小学校二年生くらいの少年と
初老のおじさん

「俺んとこのビワの木はな」
「俺んとこの警察はな」

「なんで犬飼ったらあかんのん」
「可哀想な犬もおるねんで」
「タダやねん」

と、少年による
一方通行のお話し

「そうか、そうか」

返事をするたびに
おじさんの左足が揺れる
貧乏ゆすりというやつである

ジミ・ヘンドリックスや
ピート・タウンゼントが
トローンボーンを
ステージで壊したことがあるか?

本を開いて
文字を
何度も何度も追うけれど
ひとつも内容が入ってこない

頭の中は
少年とおじさんのことで
いっぱいである

三分遅れることなんて
私にとっては
全くどうでもいい

頭の奥では
トロンボーンが鳴っている

焦りがなく
余裕があるという
何よりの財産を咀嚼する

二ヶ月ぶりの美容院
担当の人と服装が
すこぶる似ている
靴までそっくり
「ペ、ペアルックみたいですね」
と、私

シャンプー台に移動する二人は
まるで初デートで
予約していたお店に向かうような
緊張感である

仕上がりを鏡で確認し
美容師さん曰く
「多部ちゃん越え」した私は
ゆれるパーマとお散歩


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私の脚は
こんなに長かったのか
と、首を捻らせ

夕暮れと稲
パーマ液のかおりを
鼻の奥底へ
目一杯吸い込む

頭の中では
エレキギターが鳴っている

閉店間際
ショッピングモール一階
パン屋さんの
半額コーナー
50円のきなこねじりパンを買い
家路につく

明日の朝ごはんは決まった
私は朝ごはんを抱える女

明日、生きる保証は
たったひとつの
安価なパンである

生き方なんてものは
だいたいそんなものでいい

そしてずっと
そんな感じでいい

頭の中では
車掌さんの声がする

「ご乗車ありがとうございました」