「れんたろうくん!
れんたろうくん!
さっきまでここに居たのに
どこにいったの〜?」
叫ぶ四才くらいの男の子
シンプルな言葉に嫉妬する
「ママ〜
なんで雨降ってないのに
傘差してるのん?
な〜 なんで〜?」
母親の太腿をパシッと叩き
日傘の影に包まれながら
首を揺らし 見上げながら訊く
六才くらいの女の子
人の行き交う場所で
邪魔になっている日傘は嫌いだけど
なんてことを言いながら
母親の横を歩くあの道が
とてもあたたかかったことを
わたしは知っている
駅のホームでは
みんな斜め下を見ている
真っ直ぐ前を見て
微笑む女性が
とても目立っていたから
わたしは思わず目線の先を辿る
そこには
ハローキティの
風船を持った女の子
ハローキティと目が合った
そしてわたしだって
微笑んでしまう
鼻水が出そうだしムズムズするな
そう思いながら
ローソンの扉に手をかける
あれれ
鼻ちょうちん
この年になってつくるなんて
思ってもいなかったよね
最近は少し乱視で
わたしの世界では月が二つ
でも君は一つだよね
好きなもの嫌いなもの
この世界に生きる人は
たくさん持っているけれど
生まれた瞬間は
ないに等しいよね
しかし
食べ物の好き嫌いは
先天的なものもあるし
自我もなければ何もない
なんだかよく
分からなくなってきたけれど
できるだけたくさんの食物も
できるだけたくさんの思いも
好きになれるといい
そう思う
車窓が好き
正確に言えば
車窓の向こう側の景色のこと
まあ私って
話し出したらキリがないし
飲みにでもいこう
そんなことより
れんたろうくん
みつかるといいなあ
