小さな頃
いつも走ってかけあがった
薄暗い夜道を
滲んだ月の下
どこかの家の浴室から流れる
シャンプーや石鹸の
甘い匂いを嗅いで
「星をください」を口ずさんで
ゆっくりと歩く
夜空を見上げると
街灯が滲んだ
いつからだろう
夜中に目が覚めてひとりで
トイレに行けるようになったの
豆球が点いていなくても
眠れるようになったの
いつからだろう
こんなことを
歌にしようと思ったの
心に刺さったこの言葉は
昨日のものだったか
果たして
数年前のものだったか
この世界には
みえるものと
みえないものがある
図書館で借りた
本の返却期限をみつめて
私は二週間生きていたことを知る
そしてどうしていつも
延滞してしまうのだろう
水筒のお茶は入れっぱなし
サプリメントの蓋は開けっぱなし
畳んだ洗濯物は出しっぱなし
身体を拭いたタオルは放ったらかし
充電器は差しっぱなし
加湿器の水は空っぽのまま
どんな二週間を過ごしたっけ
いつの日か誰と会って誰と話し
どんなものを食べて
どんな過ごし方をしたんだろう
枠組みのなかに毎日を当てはめて
自分の言葉を確かめる
星はいなかった
月が滲んでみえたわたしは
泣いているのかと思ったけれど
わたしは泣いていない
星がみえますか

